『エイリアンズ』(キリンジ)、Aliens,Kirinji
【最低音】mid1C#(C#3)
★公団の屋根のm1C#[う]え どこへ[行]く(Aメロ)
【最高音】hiC(C5) ※各サビで2回ずつ
★hiA#[月のう]hiC[ら][を]mid2G#[ぉ] mid2F#[ゆ][めみ][て]
【補足】mid2F~hiB辺りの注意点
★mid2F#[は]mid2F[る]か空に旅客機(ボーイング)
★長mid2F[い]mid2F#[よ][る]に
☆寝つけないふm2F[た]m2F#[り][の]F#[ひ]mid2G#[た]hiA#地声[い][を][撫][で][て](Bメロ)
★hiA#[まるで]mid2F#[ぼ]mid2G#[くら][は]エイリアンズ(サビ)
★hiA#[まるで]mid2F#[ぼ]mid2G#[くら][は]エイリアンズ(サビ)
★こhiA#[の星の]hiB[へ][き]mid2G#[ち]mid2F#[の][僕][ら]hiA#[に](ラストサビ)
まず、2人組バンドのキリンジについて説明します。キリンジはかつては1996年に兄の堀込高樹さんと弟の堀込泰行さんで結成された兄弟バンドでした。独特かつポップなメロディー・サウンド、詞の世界も高い評価を得ていました。リードボーカルは主に弟の泰行さんが担っていました。セールスとしては大きな記録というものはありませんが、今回紹介する『エイリアンズ』、『Driffter』などは他のアーティストにもカバーされ、知名度も高いのではないかと思います。現在は、弟の泰行さんが脱退(2013)し、高樹さんを中心とした5人組バンドKRINJIとして活動されています。
さて、『エイリアンズ』についてです。この楽曲は2000年にキリンジによりリリースされたシングル作品です。キリンジの代表曲といってもよい作品です。作詞作曲は弟の堀込泰行さんによってなされています。元々、音楽が好きな人の間で愛されている楽曲で、たびたびアーティストにもカバーされていました。
『エイリアンズ』の知名度を一気に押し上げたのは、CMで女優ののん(能年玲奈)さんがカバーしたことにあると思います。私自身ははっきりとは記憶していないのですが、のんさんのカバー以降、公式チャンネルで公開されていたMVの再生回数が爆発的に伸びた印象です。2019年8月現在、レコード会社で公開されているMVの再生回数は1200万回を超えています。シングルでのチャート最高位は40位程度であったことを考えると快挙といえると思います。
『エイリアンズ』のサウンドについてです。二人のギターを基調としたゆったりとしたポップなメロディーです。ただ、「ポップ」といっても夜の静けさ・不気味さや浮遊感、倦怠感などを伴っており、「大衆受けする」という意味合いは決して強くありません。ただ、そうしたポップでありながら、王道から外れているようなアレンジやメロディー歌詞などがキリンジの魅力でもあります。
歌メロディー自体は、AメロBメロサビといった日本人に馴染みやすい構成になっています。しかし、メロディーやリズムは必ずしも一般的ではなく、1~2度聞けばある程度歌えるような簡単なものではありません。また、サビは裏声中心のボーカルになっております。兄の高樹さんは1オクターブ下を歌唱しています。こうしたコーラスのスタイルは最近のKing Gnuなどにもみられます。
次に『エイリアンズ』の歌詞についてです。作詞をした堀込泰行さんは「日本の大部分を占める『ノンカルチャー』な場所に合うようなものを作りたかった」と発言しています(wikipediaより)。『エイリアンズ』はただのラブソングではなく、そうした『ノンカルチャーな地方や都市の郊外』が随所に見られる秀逸な歌詞だと思います。インターネットが普及した現在であっても、やはり日本文化の中心となるのは東京や大阪などの大都会で、流行はそちらから多く発信されています。
『エイリアンズ』ではそうした大都会ではなく、また過疎化が進行し続ける田舎でもない、流行の発信地ではない地方都市や都市郊外などを想定して作られた作品だと思います。私自身の地元もそうなのですが、夜中は非常に静かで、明かりを灯しているのはコンビニか24時間営業しているスーパー、コインランドリーといったところだと思います。歌詞にもあるように、バイパスもかなり静かになります。流行の発信地東京や大阪などではなく、こうした地方や郊外などに焦点を当てているという点でエイリアンは非常に独特です。
ちなみにタイトルにも登場する「『エイリアンズ』とは何か」ですが、私自身は「寝静まる町に不釣り合いな夜行性の二人」といった解釈をしています。1番Bメロの歌詞「長い夜に寝付けない二人」という部分でそのように感じました。
また、サビの部分に登場する「禁断の実 ほおばっては 月の裏を夢みて」という歌詞はどこか「不道徳で、かつ(夜は眠る)町に溶け込めていない姿」が描かれていると思います。「月の裏を夢見ている」という部分については、私自身は「月の裏」を「ここではないどこかにある憧れの場所」だと解釈しています。月は地球に対して常に同じ面を見せており、地球からは月の裏側を見ることが出来ません。よって、「何となく憧れの場所はあるけど、地元からは抜け出せない」といったニュアンスがあるのではないかと思います。歌詞のテーマ、使われる比喩ともに逸品だと私は考えています。
さて、最後に『エイリアンズ』の音域についてですが、【最低音】mid1C#(C#3) ~【最高音】hiC(C5)でメロディーが構成されております。地声最高音はhiA#で一般的な男性の音域よりもやや高いです。
まず、地声最高音のhiA#についてですが、Bメロの最後に登場します。ただ、この部分ですが、アレンジによってはキリンジ自身も裏声で発声しています。そうしたライブの映像などが無くても、楽曲のニュアンスを考えると、この場面は裏声でも良いと思います。ただ、この場面を地声で発声した方が楽曲のメリハリは付くと思います。一方で、無理に地声で出し過ぎて、曲のムードが壊れてしまうこともあります。そのあたりは各々の声質などとも相談してみるとよいと思います。
では、地声でどのあたりまで出せればよいのかと、私自身はやはりmid2F,mid2Gあたりが一つの目安になるのではないかと思います。この辺りの音階は歌い慣れている人であればメドが付きやすいです。一方で、歌い慣れていない人は滑らかな発声が損なわれやすいですので、少しずつ歌い慣れてください。
ちなみに、『エイリアンズ』は音域的には低音部に少し余裕があり、キーを下げての練習もやりやすそうですが、リズムやメロディーがやや独特ですので、別の曲で歌い慣れた上で、この曲にチャレンジした方が良いかもしれません。
ちなみに女性がこの楽曲を歌う場合ですが、のん(能年玲奈)さんは原曲よりも3つ上げています。そのあたりを一つの目安にしてみると良いかもしれません。