『君って』(西野カナ)の音域

　まず、『君って』についてです。この楽曲は、2010年に女性歌手の西野カナさんによりリリースされたシングル作品です。アルバム作品としては、2011年の『Thank you, Love』に収録されました。同アルバムには、『Distance』、『if』などのシングル作品が収められており、出荷ベースで50万枚を超えるヒットとなりました。

　さて、『君って』は有川浩さんの同名小説を原作としたテレビドラマ『フリーター、家を買う。』の挿入歌として使用され、話題を呼びました。同ドラマは平均視聴率が17.1％と大きな人気を獲得します。
　ドラマと楽曲の質が相まって、『君って』も着うた、シングル配信の2部門でミリオンヒットを記録しました。2022年現在、西野さんは配信部門で7つのミリオンセラーを獲得していますが、同曲はそのうちの1つであり、西野さんの代表的な作品としてもよいと思います(Billion Hitsより)。同曲の作詞は西野カナさん、作曲はSAEKI youthK〈rhythm zone〉、編曲：Kotaro Egami〈SUPA LOVE〉によりなされました。


　『君って』の音域的な特徴についてです。同曲は楽曲後半でhiD〜hiE(裏声最高音はhiG)が用いられるなど、女性としては高いレンジで歌メロが作られております。そのため、通常はキーを下げたほうが歌いやすそうです。一方、同曲は見た目以上に低音域が高いため、キーを下げる余地は大きいです。故に、キー下げは比較的しやすいといえます。
　ちなみに、同曲はラストのサビで転調（厳密にはラストのサビの直前から）し、キーが1つ上がります。通常のサビではhiC#が最高音、ラストサビではhiDが最高音となります。



　最後に『君って』の音域についてですが、【地声最低音】mid1F#(F#3)〜【地声最高音】hiE(E5)、【裏声最高音】hiG(G5)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の音域と比べ高いです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1F#については、Aメロで登場します。ただ、今回のmid1F#は歌い出しの瞬間的な音ですので、あまり厳密な音程にこだわらなくてもよいと私は分析しました。
　このmid1F#を除くと、同曲は低音域がmid2B辺りと高く、必然的に高音域の頻度が高くなります。反面、キー下げはしやすいです。

　次に、地声最高音hiEはDメロ（ラストサビ直前）で登場します。登場頻度は少ないですが、hiDとのコンボになっており、かなり高音感があります。そのため、一般的な女性は、通常はキーを下げたほうが歌いやすそうです。一つの目安ですが、原曲キーから2〜3つ程度下げてみてください(♭2〜3)。


　『君って』は低音域に余地があり、キー下げはしやすいです。歌い慣れた人であれば、自分の得意なレンジに調整することができそうです。
　一方で、同曲は歌メロのテンポがゆったりしており、器用な裏声発声なども要求されます。その点で、ビギナーなどには少し難しく感じられるかもしれません。ただ、ボーカルの良さが活きやすいアレンジですので、歌いこなせると非常に心地よく感じられそうです。

　『君って』を原曲キーで歌唱する場合、hiC#〜hiEなどの高音域が地声でしっかり歌いこなせる力が求められます。hiE,hiDは2回、hiD#が4回、hiC#をピークとする場面は6回程度登場します。また、裏声最高音もhiGと高いです。よって、原曲キーの場合、「高音域が得意な女性」などが合いやすそうです。


　『君って』はゆったりとしたナンバーであり、ボーカルの良さが活きやすい作品です。カラオケ等で歌いこなせると非常に楽しいのではないかと思います。興味を持たれた方はチャレンジしてみてください。