『君は薔薇より美しい』( 布施明 ) の 音域

　まず、『君は薔薇より美しい』についてです。この楽曲は、１９７９年に男性歌手の布施明（ふせあきら）さんによりリリースされたシングル作品です。アルバムとしては、同じ年の『サバイバル 愛ある限り君は美しい』に初収録されました。

さて、『君は薔薇より美しい』は布施明さんの代表的な1曲であり、レコードのセールスは31万枚を記録しました。売上枚数では布施さんの楽曲で５番目のセールスになりますが、これまでに紅白歌合戦で4度も歌唱され、またカバーも多くなされております（鈴木雅之さんや星野源さん、上白石萌音さんなど）。
　同曲は、カネボウのCMソングとしてタイアップが付き、話題を呼びました。また、２０２３年には同じくカネボウから再びタイアップが付き、w-inds.の橘慶太さんがカバーされております。


　『君は薔薇より美しい』はミドルテンポのポップです。歌メロはAメロBメロサビといった形がありますが、「サビが特に目立つ」というより、全体的にメロが際立つ作品です。作詞は門谷憲二さん、作曲編曲はゴダイゴで活躍されるミッキー吉野さんによりなされました。ちなみに、同曲は２０２１年にミッキー吉野さん自身もセルフカバーしており、ボーカルをEXILEのSHOKICHIさんが担当されております。

　『君は薔薇より美しい』の音域的な特徴についてです。同曲は、男性の音域としては高めのレンジで歌メロが作られております。一般的な男性の場合はキーを下げた方が歌いやすそうです。
　同曲は、全体を通してmid2E～mid2F#辺りが多く、どちらかといえば中高音寄りです。そのため、標準的な音域の男性は体力的にしんどくなりやすいです。逆に、ある程度高音域が得意な男性だと比較的マッチしやすいと推測されます。

　ちなみに、同曲を女性がカバーする場合、通常はキーを上げた方が歌いやすいと思います。一つの目安ですが、原曲キーから３つ程度下げてみてください。この場合だとmid1G～hiCのレンジに調整されます（上白石萌音さんがこのレンジでカバーされてます）。



　最後に『君は薔薇より美しい』の音域についてですが、【地声最低音】mid1E(E3)～【地声最高音】hiA(A4)で歌メロディーが構成されております。一般的な男性の音域と比べ、高めです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1EはBメロやサビで登場します。この辺りは男性の音域の範囲内です。高音域が非常に得意な男性だと若干低く感じやすいかもです。
　一方、mid1Eは女性にとってはかなり低い音階になります。そのため、女性の場合は通常はキー上げを推奨します。「標準より低めの音域の女性」などの中には、原キーが合うという人もおられるかもしれません。

　次に、地声最高音hiAはサビで登場します。登場回数は6回（3場面）です。この辺りは男性の音域としては高く、通常はキーを下げた方が歌いやすそうです。一つの目安ですが、原曲キーから２つ程度下げてみてください。カバーした歌手だと、ASKAさんが原キー、星野源さんが1つ低く（♭１）、EXILEのSHOKICHIさんや鈴木雅之さんが2つ低い（♭２）、ミュージカル俳優の山崎育三郎さんが３つ低いレンジ（♭３）で歌唱されております。


　『君は薔薇より美しい』は低音域に余地があり、キー下げはしやすいです。そのため、歌い慣れた人であれば、ある程度自分が得意なレンジに調整することができると思います。一方、音域が若干広いため、ビギナーなどは歌いにくい部分が出てくるかもしれません。また、歌謡曲時代の作品としては若干リズムが取りにくいですので、そうした点もビギナーには向きにくい点です（最近の曲と比べるとまだ分かりやすいかもですが）。
　『君は薔薇より美しい』はメロディー自体は比較的わかりやすく、また、布施さんの高い歌唱力も大きな学びにつながりやすいです。キー調整を含め、音域がマッチするのであれば、おススメしたい1曲です。

　『君は薔薇より美しい』を原曲キーで歌唱する場合、mid2E～hiAといった中高音域をしっかり歌いこなせることが求められます。今回はmid2E～mid2F#辺りの回数が多く、標準よりは高いです。そのため、「標準より高め～ある程度高音域が得意な男性」などが原曲キーに合いやすいと私は判断しました。
　同曲は各サビの最後にhiAのロングトーンがあり、楽曲の肝になっております。そのため、hiA辺りをしっかり歌える人には気持ちがよい楽曲ではないかと思います。個人的にはカラオケにも向きやすいと感じました。


　『君は薔薇より美しい』はメロがよく、ボーカルの良さが活きやすい楽曲です。個人的には歌詞なども印象に残りました。布施さんの歌唱表現にも学びが多く、音域が合う人には特におすすめです（King Gnuの井口理さんもよく聞かれていたそうです）。興味を持たれた方はチャレンジしてみてください。