『DIGNITY』(Ado)の音域 / 映画『沈黙の艦隊』主題歌

　まず、『DIGNITY』についてです。この楽曲は、２０２３年に女性歌手のAdoさんによりリリースされたシングル作品です。比較的新しめの作品であるため、アルバムには未収録です。

　さて、『DIGNITY』は、かわぐちかいじさんの同名漫画を原作とした実写映画『沈黙の艦隊』の主題歌として書き下ろされました。『沈黙の艦隊』は累計発行部数が３２００万部を超える人気漫画であり、これまでにアニメ化やゲーム化などもされております。ストーリーは日本や欧米、中国や旧ソビエトなど実際の国を舞台に潜水艦戦を描いており、核戦争や国際政治などへの問題提起もなされております。


　さて、『DIGNITY』はスローなロック曲です。イントロがピアノで始まり、ストリングスやバンドサウンドが加えられる壮大なバラード曲となっております。歌メロはAメロBメロサビと展開します。J-POPに馴染んだ人には親しみやすく、カラオケなどでも映える楽曲なのではないかと思います。
　同曲は作詞をB’zの稲葉浩志さん、作曲を松本孝弘さんが担当しており、その点でも大きな話題となりました。B’zが他のアーティストに楽曲提供を行うことは非常に稀であり、私自身も印象に残っています。編曲は亀田誠治さんによりなされました。

　『DIGNITY』の音域的な特徴についてです。同曲は、女性の音域の範囲内（もしくはやや高め）のレンジで歌メロが作られております。低音域に若干の余地があるため、人によっては少しキーを下げるのもよいと思います。
　同曲はAメロBメロサビと盛り上がる楽曲ですが、ABメロは中低音中心（中高音も裏声ベース）であり、サビは中高音が増え大きく盛り上がります。そのため、音域は低音～高音までそれなりに広いです。加えて、地声と裏声の器用な使い分けも不可欠になります。
　一方、Adoさんの人気曲と比べると、デタラメな高音が求められる場面はないため、個人的にはおススメしやすい1曲だと感じました。メロディー自体も比較的わかりやすいです。

　男性が同曲を歌唱する場合、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。一つの目安ですが、原曲キーから４～５つ程度下げてみてください。一方、今回の楽曲は「高音域が非常に得意な男性」だと原曲キーでの歌唱も可能ではないかと私は推測しました。ただ、男性の得意レンジなどを考慮すると、若干キーを下げた方がより安定すると思います。



　最後に『DIGNITY』の音域についてですが、【地声最低音】mid1F#(F#3)～【地声最高音】hiC#(C#5)、【裏声最高音】hiD#(D#5)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の音域の範囲内（もしくはやや高め）です。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1F#は最終盤のAメロで登場します。登場回数は1回のみです。この場面以外では、mid1G#が一部で登場します。「高音域が得意な女性」などは少しキーを上げるのもよいかもしれません。

　次に、地声最高音hiC#はサビで登場します。登場回数は３回程度です。このhiC#に次ぐ地声高音としては、hiBがピークとなる場面が全体で１２回程度登場します。こうしたことから、女性の音域の範囲内、もしくはやや高めであると判断しました。原曲キーで歌唱可能な方も多いと思いますが、場合によってはキーを調整するのもよいと思います。キーを下げる際は、原曲キーから1つ程度下げてみてください。


　『DIGNITY』は低音域に若干の余地があり、キー下げは可能です。そのため、歌い慣れた人であれば、ある程度自分の得意なレンジに調整することができると思います。今回の楽曲は音域がやや広いため、ビギナーだと一部歌いにくい部分が出てくるかもしれません。
　同曲はメロディー自体は比較的わかりやすく、リズムもそこまで難しくはありません。そのため、Adoさんの人気曲と比べると取っ付きやすいのではないかと私は推測しました。ちなみに、Aメロ⇒Bメロ、サビ⇒2番Aメロの場面では転調が行われていますので、音程が合いにくい人はその辺りに注意を払ってみてください。

　『DIGNITY』を原曲キーで歌唱する場合、mid2G#～hiC#といった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。今回はサビを中心にこれらが多く登場します。一方、要所で裏声地声が用いられておりますので、器用な裏声発声などは不可欠になります（2番以降は地声の比率が高くなる）。一方、低音域はmid1F#,mid1G#などが登場します。
　こうしたことを踏まえると、「標準的～ある程度高音域が得意な女性」が原曲キーに合いやすいと私は判断しました。「高音域が得意（or非常に得意）な女性」はキーを少し上げるのもよいと思います。今回はロック色のある曲ですので、声を強く張る発声に慣れている人の方がマッチしやすそうです。


【まとめ】

①ABメロは中低音中心（中高音は裏声）、サビは中高音が増える
②原キーだと「標準的～ある程度高音域が得意な女性」に合いそう
③要所で裏声と地声の使い分けが必要。ロック系の曲に歌い慣れている人は合いやすい
④メロは分かりやすく、Adoさんの人気曲と比べると歌いやすそう