『ぼくらの』(Eve)の音域

★きm2G#–F#–F^[み]が]い[る]か]ら[もう]大丈夫 もう一度立ち上がってくF#[れ]マイ]ヒーロー

　まず、『ぼくらの』についてです。この楽曲は、２０２３年に男性シンガーソングライターのEveさんによりリリースされたシングル作品です。配信限定のシングルとして発表された後に、EP作品の『ぼくらの』としてフィジカルリリースされました。この記事を執筆時点でではアルバムには未収録です（２０２４年４月時点）。ちなみにEPには、当ブログでも取り上げた『白雪』（過去記事）も収録されております。

　さて、『ぼくらの』は、堀越耕平さんの同名漫画を原作としたテレビアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期第2クールオープニングテーマとして書き下ろされました。楽曲の質も相まって、『ぼくらの』はEveさんのYouTube公式チャンネルで１３００万回を超える再生回数を記録しています。


　『ぼくらの』はアップテンポのバンド曲です。Eveさんらしいノリの良いギターロックであり、疾走感があります。歌メロについてはAメロBメロサビと展開、中低音の声域が中心となったABメロ⇒中高音中心のサビへと大きく盛り上がります。作詞作曲はEveさん、編曲はNumaさんとTAKU INOUEさんによりなさされました。NumaさんはEveさんの作品ではお馴染みのアレンジャーです。また、TAKU INOUEさんはanoさん、星街すいせいさんなど縁が深いアレンジャーです。Eveさんの作品としては心予報（過去記事）のアレンジなどに携わりました。


　『ぼくらの』の音域的な特徴についてです。同曲は男性の音域としては高めのレンジで歌メロが作られております。一般的にはキーを下げた方が歌いやすいですが、今回は音域が広いため、キーを下げる余地はあまりありません。
　同曲はABメロは中低音中心であり、lowG#など低い音階も登場します。Bメロ終盤～サビにかけては中高音域が頻出するようになります。こうしたことから、音域がかなり広く、低音～高音まで広い音域が要求されます。中高音についてはhiA#などの高音域が登場しますが、低音が低い分、「高音域が得意すぎると逆に低音域が歌いにくくなる」可能性があります。歌える人が限定される楽曲だと私は感じました。

　女性が同曲を歌唱する場合、通常はキーを上げた方が歌いやすいです。ただ、今回の楽曲は低音～高音まで音域がかなり広いため、歌える人が限定される楽曲です。



　最後に『ぼくらの』の音域についてですが、【地声最低音】lowG#(G#2)～【地声最高音】hiA#(A#4)、【裏声最高音】hiC#(C#5)で歌メロディーが構成されております。一般的な男性の音域と比べ、高めです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音lowG#はAメロやBメロで登場します。この辺りは男性の音域としては低く、それなりに低音域が得意である必要があります。「高音域が非常に得意な男性」などは逆に低音域が歌いにくく感じるかもしれません。

　次に、地声最高音hiA#はサビで登場します。登場回数は５回程度です。このhiA#に次ぐ地声高音としてはhiAがピークとなる場面が全体で１回、mid2G#は２５回程度登場します。こうしたことから、男性の音域としては高めであり、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。一つの目安ですが、原曲キーから２つ程度下げてみてください（低音が少し歌いにくいかもしれません）。


　『ぼくらの』は低音域が低く、キーを下げる余地があまりありません。今回の楽曲は低音～高音まで音域がかなり広く、キー調整には向きにくい楽曲だといえます。そのため、歌い慣れた人であっても一部で歌いにくい部分が出てくる可能性があります。キー調整を考慮しても歌える人が限定されやすい楽曲です。
　今回の楽曲はメロディー自体は比較的わかりやすいです。一方、メロとメロの継ぎ目が短く、息継ぎがしにくい場面があります。歌詞やメロをしっかり覚えた上で、「息継ぎを入れるポイント」をしっかり意識しておきたいです。

　『ぼくらの』を原曲キーで歌唱する場合、mid2F～hiA#（裏声hiC）といった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。これらはサビを中心に多いです。反面、ABメロはlowG#～mid1C#などが多く、低音感があります。低音～高音まで音域がかなり広く、歌える人が限定されそうです。
　こうしたことを考慮すると、「(ある程度)高音域が得意な男性」などが原曲キーに合いやすいと私は判断しました。


【まとめ】

①ABメロは低音感があり、サビは男性としては高め（音域がかなり広い）
②原キーだと「(ある程度)高音域が得意な男性」に合いそう
③音域がかなり広いため、キー調整を考慮しても歌える人が限定される