『昇る太陽』(宮本浩次)の音域

　まず、『昇る太陽』についてです。この楽曲は、エレファントカシマシのボーカルである宮本浩次さんによりリリースされたシングル作品です。アルバムとしては、翌年に発売されたソロアルバム『宮本、独歩。』（みやもと、どっぽ。）に収められております。同アルバムには、椎名林檎さんとのコラボ曲『獣ゆく細道』(過去記事)や、『ハレルヤ』(過去記事)、『冬の花』(過去記事)などの楽曲が収められております。

　さて、『昇る太陽』はアップテンポのバンド曲です。全体的に力強いロック曲ですが、サビでは裏声が多用されており、その点でも特徴的です。作詞作曲は宮本浩次さん、編曲は村山☆潤さんによりなされました。村山さんは宮本さんの所属するエレファントカシマシとも縁があり、『RAINBOW』（過去記事）などのアレンジにも携わっています。


　『昇る太陽』の音域的な特徴についてです。同曲は男性の音域としては高い（もしくは「かなり高い」）レンジで歌メロが作られています。低音域に余地があるため、一般的にはキーを下げた方が歌いやすいです。
　同曲は、前奏がほぼ無く歌からメロが始まり、AメロBメロサビと展開されます。サビやイントロなどで見られるhiC～hiEといった地声高音に目が行きますが、ABメロでもmid2F#～hiA(hiB)などの中高音が見られ、男声域としては全体的に高いです。反面、低音としてはmid1Eが見られ、こちらも男声曲としてはやや高めです。発声のニュアンスは異なりますが、女声域と近似する声域であり、男性曲としてはかなり高い曲です。また、サビでは裏声が多用されているため、そうした器用な発声も求められる曲です。

　女性が同曲を歌唱する場合、人によっては原曲キー辺りがマッチしうる曲です。今回は低音域としてmid1E辺りが見られますが、頻度としては低いです。人によってはキーを調整した方が歌いやすい可能性もあるため、その辺りは実際に歌唱して調整を加えてください。
　一方で、同曲は音域がかなり広いため、その点で歌う人を選ぶ曲でもあります。その点は留意しておいてください（基本的な歌メロだけを見ても2オクターブ超程度あります）。



　最後に『昇る太陽』の音域についてですが、【地声最低音】mid1B(B2)～【地声最高音】hiE(E5)、【裏声最高音】hiF(F5)で歌メロディーが構成されております。一般的な男性の音域と比べ、かなり高いです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1Bについては、1番Aメロで登場します。このmid1Bについては歌い出しの瞬間的な音であり、やや聞き取りにくいです。今回は低音域としてはmid1E辺りがしっかり歌えると形になりやすいと私は分析しています。mid1Eについても頻度がそこまで多くないので、低音だけを見てもやや中高音に寄っています。

　次に、地声最高音hiEはイントロで登場します。登場回数は１回程度です。このhiEに次ぐ地声高音としては、hiDがピークとなる場面が全体で３回、hiC#が９回、hiCが２４回程度登場します。こうした点を考慮すると、男性の音域としてはかなり高く、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。ただ、今回は高音域が高いため、男性曲としてはキー調整しにくそうです。


　『昇る太陽』は低音域に余地があるため、キー下げは可能です。ただ、今回の楽曲は基本的な歌メロがmid1E～hiE(裏声はhiF)と広い音域で作られています。また、高音が高いため、一般的な男性が歌いやすくなるためには多くのキー調整が必要になります。その点で違和感を覚えやすいかもしれません。キー調整を考慮しても、高音域が得意な人向けの曲であると私は分析しています。

　『昇る太陽』を原曲キーで歌唱する場合、hiA～hiE(裏声はhiFまで)といった中高音域がしっかり歌いこなせることが求められます。今回はサビを中心に中高音域が頻出しますが、ABメロでもmid2F#～hiB等が見られます。低音域としてはmid1E等が見られますが、男性曲としてはやや高い印象です。
　こうした点を考慮すると、「高音域が非常に得意な男性」などが原曲キーに合いやすいと私は判断しました。また、低音域をある程度克服できるのであれば、「標準よりやや低め～標準より高めの女性」なども原曲キーがマッチする可能性があります。ロック的な発声が顕著な曲ですが、音域的には女性の方が合いやすいかもしれません。


【まとめ】

①サビが際立って高い。ABメロもそこまで低くなく中高音寄り
②原キーだと「高音域が非常に得意な男性」向け
③サビでは裏声も多用されるため、器用な発声が不可欠
④音域的には女性の方が合うかも（標準よりやや低め～高め」等）
⑤一般的な男性だとキー調整しにくい