『飾りじゃないのよ涙は』(中森明菜)の音域 [1984年の作品]

　まず、中森明菜（なかもりあきな）さんについて少しだけ説明します。中森明菜さんは、1982年にデビューした女性歌手で、セカンドシングル『少女A』のヒットにより、知名度が大きく上昇しました。同じ時期にデビューしたアイドルの松田聖子さんと人気を2分した1980年代を代表する女性アイドル歌手であります。
　中森明菜さんは、女性アイドルでありながら、「不良性」、「アウトロー感」、「アダルト」、「ダークさ」などを強く打ち出した路線が大きくヒットしました。当時、先にデビューした松田聖子さんが王道のアイドル路線でムーブメントを巻き起こしておりました。そのため、人気を分けた中森さんと松田さんで楽曲のカラーが大きく異なっており、そうした面も個人的には面白く感じました。


　さて、『飾りじゃないのよ涙は』（かざりじゃないのよなみだは）についてです。この楽曲は、1984年に女性アイドルの中森明菜さんによりリリースされたシングル作品です。アルバムとしては、1985年の『BITTER AND SWEET』（ビター・アンド・スウィート）には収録されております。ベストアルバムなどにも収められた中森さんの代表的なシングル作品の1つです。

　『飾りじゃないのよ涙は』は作詞作曲を男性シンガーソングライターの井上陽水さんが手がけたことでも知られております（編曲は萩田光雄さん）。同曲は、中森さんのシングルとしては3番目の売上を記録しており、後に陽水さん自身もセルフカバーされました。また、他のアーティストなどにも多くカバーされており、2019年には井上陽水さんのトリビュートアルバムで、King Gnuが同曲をカバーし話題となりました。
　私なりの印象ですが、中森さんの楽曲は、アイドルよりもむしろ「歌手」や「ロックミュージシャン」等に大きな影響を与えたのではないかと感じております。今回の『飾りじゃないのよ涙は』についても、GO!GO!7188、加藤登紀子さん、PENICILLIN、JUJUさん、鬼龍院翔さんなどがカバーされております。


　『飾りじゃないのよ涙は』の音域的な特徴についてです。同曲は大よそ、一般的な女性の音域の範囲内で歌メロが作られております。最近のJ-POPの女性曲と比較しても少し低いレンジかもしれません。そのため、大きなキー下げには向きにくいですが、多くの女性が原曲キーで歌唱することも可能だと思います。
　ちなみに、セルフカバーをされた井上陽水さんはm1C#～mid2E(mid2F#[フェイク])で歌われており、一般的な男性でも取っ付きやすいです。また、King Gnuについては、mid1F～mid2G#と原曲キーより1つ低いレンジで歌われております。「ある程度高音域が得意な男性」はKing Gnuか中森さんのキーで歌唱するのがよいと思います。


　最後に『飾りじゃないのよ涙は』の音域についてですが、【地声最低音】mid1F#(F#3)～【地声最高音】hiA(A4)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の音域の範囲内です。以下、見ていきます。

　まず、地声最高音hiAについては、サビで登場します。登場回数は10回程度で【hiA–m2G#[飾りじゃない]のよな][みだは HA HAN]m2F#】のように連続的に登場します。このhiA辺りは一般的な女性の音域の範囲内でありますが、歌い慣れていない人などはスムーズな発声が損なわれやすいです。ただ、女性の場合は比較的克服しやすいレンジですので、少しずつ練習を重ねてください。

　『飾りじゃないのよ涙は』は低音域に少しの余地があり、キー下げは可能です。ただ、Aメロは女声レンジとしては比較的低いため、大きなキー下げには向きにくいです。
　一方、同曲は最高音がhiAということもあり、J-POPの女性曲としては少し低いです。そのため、人によっては少し歌いにくいかもしれません。そのため、「ある程度高音域が得意な女性」などはキーを上げることも選択肢として考えて下さい。

　『飾りじゃないのよ涙は』は最高音がhiAということもあり、一般的な女性でもチャレンジしやすいレンジです。原曲キーで歌唱する場合は、「標準よりやや低め～標準的な女性」などが合いやすいのではないかと思います。また、「高音域が得意な男性」なども原曲キーが視野に入ります。

　先にも述べたように、「一般的な男性」は井上陽水さんのセルフカバーや、King Gnuによるカバーバージョンが選択肢に入ると思います。King Gnuのバージョンは、中森さんと1つしかキーが違わないので、「標準より高め～ある程度高音域が得意な男性」などが合いやすいと推測されます。

　『飾りじゃないのよ涙は』は歌メロなどもシンプルであり、カラオケでもチャレンジしやすいのではないかと思います。高いレベルで歌唱するためには力量が問われますが、興味を持たれた方はチャレンジしてみてください。