『アイネクライネ』(米津玄師)Eine Kleine(Kenshi Yonezu)
2014年4月23日発売【アルバム『YANKEE』収録】
【地声最低音】mid1C#(C#3)
★あたしあなたに会えて本当に嬉しい「の」に(Aメロ)
★今痛いくらい幸せな思い[出]が いつか来るお別れを育ててあ[るく]
★誰にも言えない秘密があって嘘をついてしまうの[だ](Bメロ)
★あなたが思えば思うよりいくつもあたしは意気地ない[のに](Bメロ)
【地声最高音】mid2G#(G#4)
★消えない[か][な][し]みも綻(ほ[こ]ろび)びも あなたといれば[mid2F#][mid1F]【サビ】
★産まれてきた[そ][の][瞬]間にあたし[mid2F] 【Cメロ】
※「産まれてきた~」の部分は裏声のようにも聞こえますが今回は地声としておきます
まず、『アイネクライネ』についてです。この楽曲は米津玄師さんの1枚目のメジャーアルバム『YANKEE』(2014)に収録された楽曲で、アルバムの発売に先立ち、YouTubeの公式サイトにMVが公開されました。楽曲は2014年度東京メトロCMソングとしてのタイアップも付いております。
この楽曲は蔦谷好位置さんにより編曲されております。米津さんが外部のプロデューサーを招くのはこの楽曲が初めてとなります。2019年3月現在、YouTubeの米津玄師公式チャンネルでは1億8000万回もの再生回数を記録しております。非常に人気の高い楽曲です。
『アイネクライネ』のサウンドは、アコースティックギターによる弾き語りから始まり、徐々にバンドサウンドが加わっていきます。個人的に、アコギによる音作りは米津さんには珍しいように感じました。パッと思いつく有名曲のは、『サンタマリア』でしょうか。個人的には米津さんはアコギよりもエレキギターのイメージが強いです。全体として、メロディーの美しさが目立つ作品だと思います。
まずタイトルの『アイネクライネ』とはドイツ語で細かく説明すると非常に複雑なのですが、「小さな(少女)」というニュアンスです。そうしたタイトルのように楽曲は女性が主人公として描かれた楽曲のようです。
歌詞については、どこか不安定さを感じさせる「あたし」が「あなた」に宛てたラブソングという形になっております。「いつまでもいつまでも超えられない夜を 超えようと手をつなぐこの日々が続きますように」とあるように少女の心情は非常に不安定であります。「石ころにでもなれたらいいな」と言っていた女性が、「あなた」との出会いにより少しずつ変わっていきます。
個人的に面白いと思ったフレーズは「あなたにあたしの思いが全部伝わってほしいのに 誰にも言えない秘密があって嘘をついてしまうのだ」という点です。恋愛というのは綺麗な姿だけではありません。例えば、「気になる男子が別の女子と仲良く話をしているのを見て、何となく落ち込む」みたいな人もいるかもしれません。そうした姿は相手への恋心の表れですが、相手には伝わって欲しくない感情だと思います。誰しもが抱く感情を、米津玄師さんは上手く切り取っていると思います。
さて、『アイネクライネ』の音域についてですが、地声最低音mid1C#(C#3)~地声最高音mid2G#(G#4)でメロディーが構成されております。 一般的な男性の音域の範囲内と言えます。ただし、2つ注意点があります。
①音域の上下がかなり激しい
「消えない[か][な][し]みも綻(ほ[こ]ろび)びも あなたといれば[mid2F#][mid1F]【サビ】」
最高音はmid2G#ですが、「あなたといれば」はmid1F(F3)でかなり低音域です。このワンフレーズだけ見ても非常に上下が激しいです。それぞれの音を滑らかに発声することが求められます。
②mid2Gやmid2Fは声を出し慣れていない人だとミスる可能性が結構ある
普通のメロディーラインでもこの音階が滑らかでない人は多いです。そこで音域の上下が激しいメロディーラインが来ると、ミスする可能性はかなり高くなります。
一般的な男性の音域であるけど、必ずしも気軽に歌いこなせる楽曲ではないということに留意しておく必要があると思います。とはいえ、難易度が非常に高いというわけではありません。音域的には努力が報われやすい楽曲であると思います。
mid2G#位になると裏声でないと厳しいという人もいますので、場合によってはキーを下げるという選択肢があっても良いと思います。
因みに、『アイネクライネ』は女性目線で描かれた曲でありますので、女性が歌っても違和感が無いと思います。昨年、いきものがかりのボーカル吉岡聖恵さんが『アイネクライネ』をカバーしました。ネットでも女性によるカバー動画が多く上げられています。ちなみに吉岡さんは原曲のバージョンよりも4つ高い(#4)音域で歌っております。具体的にはmid1F(F3)~hiC(C5)になります。吉岡さんのバージョンは楽曲としては少し明るい印象です。