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『恋と病熱』(米津玄師)の音域と感想

こんにちは。今回は米津玄師さんの『恋と病熱』(2012)を取り上げたいと思います。よろしくお願いします。


『恋と病熱』(米津玄師),Koi to Byounetsu(Kenshi Yonezu)


【地声最低音】mid1G(G3) 

★沢山増えた m1B[ま]どに滲む雲を見ていた


【地声最高音】mid2G(G4)  

m2E[あい]m2G地声[さ]m2E[たい]こと


【裏声最高音】mid2G(G4) 

★眩暈m2E[に]m2F#[お]ぼれてm2E[ゆ]m2G裏[め]m2E[見]ていた



【補足】mid2Emid2F#の箇所

★「何処にも行けない私mid2E[を]どうする?」
m2E[空っ]ぽになるまで 詰め込んで
★誰も嫌いm2F#[た]m2E[く]ないから

『恋と病熱』(米津玄師)









 まず、『恋と病熱』についてです。この楽曲は2012年にシンガーソングライターの米津玄師さんによりリリースされたアルバム『diorama』に収録されている楽曲です。アルバムの発売に先立ち、MVが公開されました。ちなみに、『diorama』はこれまでボカロPのハチとして活動していた米津玄師さんが、本人名義でリリースした初のアルバムです。
 『恋と病熱』は米津玄師さんのYouTube公式チャンネルでMVが公開されており、2019年9月現在、約1900万回もの再生回数を記録しています。このMVでは最後のサビが省略されているのですが、非常に多くのアクセスが集まっております。

 『恋と病熱』のサウンドについてです。最近はストリングスなどを交えたアレンジなども見られる米津さんですが、『恋と病熱』はバンドサウンドが基調となった緩やかなテンポの楽曲です。イントロのギターサウンドが印象的です。個人的には、サビのリードギターなども耳に残りました。
 また、この『恋と病熱』では最後最後のサビメロディーが途切れるようにして演奏が終了します。こうした演出も非常に聴き手の想像を喚起する仕掛けだと思いました。個人的には、cosMo@暴走Pさんによる初音ミクの楽曲『初音ミクの消失』のアウトロを思い出しました。

 『恋と病熱』の歌メロディーについてですが、私個人としては米津玄師さんのメロディーメイカーとしての資質の高さを再確認させられました。『Lemon』や『パプリカ』、『打上花火』などではそうした面が遺憾なく発揮され、多くの人の耳に届くことになりましたが、ファーストアルバムに収録されている『恋と病熱』においても、そうしたメロディーメイカーとしての端緒を感じました。

 
 『恋と病熱』の歌詞についてです。タイトルにもあるように恋をテーマにした作品です。ちなみに、『恋と病熱』というタイトルは宮沢賢治の詩の表題から引用されています。
 楽曲『恋と病熱』では、タイトルにあるように主人公の感じる恋の苦しみが描かれます。一方で、主人公は恋のみならず、どこか社会に適合できないような鬱屈としたものを感じます。「誰も嫌いたくないから ひたすら嫌いでいただけだ 皆のこと 自分のこと 君のこと」などからそのように感じました。他者に対して距離を取った振る舞いをしているのが想像できます。自己肯定感も低いため、恋に対してもあまり積極的ではないように私には感じられました。人間として当たり前である「恋心を抱くこと」に対して、「許し(赦し)」を願う姿は非常に印象的です。
 



 さて、最後に『恋と病熱』の音域についてですが、【地声最低音】mid1G(G3) ~【最高音】mid2G(G4)でメロディーが構成されております。一般的な男性の音域の範囲内です。

 まず、地声最高音についてですが、mid2Gです。これはサビの中で発声されております。同じフレーズを裏声で歌っている場面も見られますので、読者の皆様が歌唱したり、練習したりする際は裏声でも良いかもしれません。特に、普段歌い慣れていない人の場合、mid2G辺りはボーダーラインの一つになります。故に、サビのmid2Gの場面を裏声で統一するのはあり得る選択肢だと思ってください。

 『恋と病熱』についてですが、普段歌い慣れていない人はキーを少し下げて練習するのもアリかもしれません。例えば、キーを1つ下げて、最高音をmid2F#辺りに設定するのも良いと思います。ただ、『恋と病熱』は低音域にはあまり余裕がありませんので、キーを下げ過ぎると逆に歌いにくくなる可能性もあります。その点は留意しておいてください。

 米津玄師さんの作品についてですが、キャリアの初期の作品の方がキーが低めの曲が多い印象です。歌の練習をしたい方は、初期の作品を選択肢に入れてみても良いかもしれません。

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