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『モス』(サカナクション)の音域と感想

 こんにちは。今回はサカナクションの『モス』(2019)を取り上げたいと思います。よろしくお願いします。


『モス』(サカナクション),Moth(Sakanaction)


【地声最低音】mid1F(F3) 

m1F[か]かえても[か]なえら[れ]ないこ[と](Bメロ)
★マイノリティ m1F[あ]めに打た[れ](サビ)


【地声最高音】hiC(C5)  

mid2F[揺]mid2G#[れ]mid2G[て]るこhiC[こ]hiA#[ろずっ][と](サビ) 
hiA#[三つ目]mid2G#{の]hiC[眼]


【裏声最高音】mid2G#(G#4) 

★君のこと (mid2G裏{ソウゾウデ]mid2G#{キ][ズ]mid2F{ニ])


【補足】mid2Fmid2G#辺りの注意点

★ラmid2F[ラ] [ラ] [ラ] [ラ]mid2G#[ラ]mid2G[ラ]]ラ(イントロ)
mid2F[マ]mid2G#[ユ]mid2G[割っ]て蛾[に]なる(サビ冒頭)


※ラララの部分は歌詞カードには表記されていません
『モス』(サカナクション)









 まず、『モス』についてです。この楽曲は2019年に5人組バンドサカナクションによりリリースされたアルバム『834.194』に収録されている楽曲です。タイアップとして、フジテレビ系ドラマ『ルパンの娘』の主題歌に起用されました。ただ、書き下ろしなどではないようです。
 『モス』はサカナクションのYouTube公式チャンネルでMVが公開されており、2019年8月現在、200万回超の再生回数を記録しています。MVでは繭の中から這うように登場するフロントマンの山口一郎さんが印象的なMVになっています。

 『モス』のサウンドについてです。以前レビューした『忘れられないの』のように、7~80年代の日本のポップスをモチーフにしたようなイントロが印象的な楽曲になっています。ちなみに、この頃は『J-POP』という言葉はありません。『J-POP』は大よそ平成以降の邦楽で用いられることが増えていきます。山口一郎さん自身はC-C-Bや山本リンダさん、トーキングヘッズ辺りの楽曲からアイデアを広げていったようです。山本リンダさんの楽曲『狙いうち』(1973)あたりは高校野球の応援の定番になっているので、若い世代でも知っている人も多いと思います。
 個人的には、Aメロ、Bメロ(2番以降が特に)の楽器の音色が非常に好きです。また、ラストサビに向けたララララの箇所のギターも耳に残ります。楽曲全体を通して民俗音楽的なアレンジのドラミングも気になりました。

 余談になりますが、邦楽は音楽配信などで、ネット普及以前にリリースされた作品の品ぞろえがあまり良くないと言われることが多いです。私自身もYouTubeなどでも80年代以前のミュージシャンが公式チャンネルで動画を公開していることは少ないように感じます。そうした点の権利関係などが上手く解決されて、音楽配信などがもっと盛んになってほしいと強く感じます。

 『モス』の歌詞についてです。まず、『モス』についてですが、英語のMothから来ており、蛾を意味します。決して人気の高い昆虫ではありません。
 サカナクションの歌詞は抽象性が高く、様々な解釈ができるのが魅力の一つですが、私はどこかマイナーなものが好きな主人公が、自分を出せないまま君に近づけずに終わっていく様をが描かれていると思います。
 ただ、そうしたことが楽曲では必ずしも否定的には描かれていません。それは、「抱えても 叶えられなくても 比べても 一人でうずくまってもつまづいても 誰かが指差しても 次の場所を 行けるとわかってたんだろう」という歌詞に象徴されると思います。願いが叶わず、負けることが分かっていても、次の場所に飛び立てることを夢見ています。そうしたことを「繭を割る」と表現していますが、自分はやはりマイナー感の強い「蛾」であると考えているようです。好きなものがなかなか周りと合わずに苦労している人には強く共感できる歌詞ではないかと思います。
 個人的には、「揺れてる心ずっと 三つ目の眼」という歌詞が印象に残りました。私なりの解釈ですが、心を「三つ目の眼」と表現している点が面白く感じました。
 


 さて、最後に『モス』の音域についてですが、
【地声最低音】mid1F(F3) ~【地声最高音】hiC(C5) 、【裏声最高音】mid2G#(G#4)でメロディーが構成されております。一般的な男性の音域よりも高いです。

 まず、地声最高音のhiCはサビで登場します。ハッキリと地声で発声しております。故に、『モス』を原曲キーで歌唱する場合は裏声などで対応するのは難しく、地声でhiCを発声する必要があると思います。その点で、ハードルの高い作品だと言えます。

 その他の『モス』の音域的な特徴は、低音部(mid1F)が男性ボーカルにしては高めであることです。故に、キーを下げて歌唱したりするのには向いている楽曲でもあります。キーが高いと感じられる方は、キー調整を行うのも有力な選択肢の一つだと思います。例えば、原曲キーから4つ程度下げると、地声最高音がmid2G#辺りに設定されます。一般的な音域の男性はこの辺りを一つの基準と知ると良いと思います。
 一方で、いつも申しますように、普段歌い慣れていない男性の場合は、こうしたmid2F,mid2G等の音階がスムーズに発声することが出来ません(一般的な男性)。故に、歌い慣れてた上で、この『モス』にチャレンジすると良いと思います。
 先に列挙した原曲キー-4よりもさらに下げると、普段歌い慣れてない人でも高音部は歌いやすくなると思います。しかし、あまり下げ過ぎると低音部がかなり歌いにくくなるのではないかと私は考えました。その辺は、各々で試してみてください。

 『モス』はテンポも速く、カラオケなどでも盛り上がりやすい楽曲だと思います。原曲キーで歌うのは大変だと思いますが、キーを下げたとしても盛り上がれる楽曲になるのではないでしょうか。

 ちなみに『モス』は女性が歌唱しても良い楽曲であると思います。音域的には、男性よりも女性の方が少ないキー調整で自分に合った調整が出来ると思います。

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