『メフィスト』(女王蜂)の音域　『推しの子』ED曲

　まず、『メフィスト』についてです。この楽曲は、２０２３年に4人組ロックバンド女王蜂によりリリースされたシングル作品です。配信シングルとしてリリースされた後、CDシングルとしてリリースされました。最新作であるため、アルバムには未収録です。ちなみに、女王蜂は、２０２３年の３月にフルアルバム『十二次元』をリリースしており、『メフィスト』はアルバム後初のシングルとなります。

　『メフィスト』は赤坂アカさん原作、横槍メンゴさん作画の同名漫画を原作としたアニメ『推しの子』のエンディングテーマとして書き下ろされました。同作は今春の話題アニメとなっており、YOASOBIの『アイドル』(過去記事)も大きなヒットを記録しております。『メフィスト』も楽曲の質が相まって、ストリーミングランキングでも上位に位置しております。


　『メフィスト』はアッパーなバンド曲です。歌メロはAメロBメロサビと展開します。女王蜂の楽曲の多くに言えるのですが、同曲も高い裏声が特徴的であり、メロのアップダウンが非常に激しいです。メロディーそのものは分かりやすいのですが、メロの上下を正確に歌唱するのが非常に大変そうです。同曲の作詞作曲は薔薇園アヴさんによりなされました。

　『メフィスト』の音域的な特徴についてです。同曲は、地声レンジについては男性の音域の範囲内（やや低め）で歌メロが作られております。そのため、地声レンジについては、一般的な音域の男性も取っ付きやすいと思います。
　一方、同曲はサビを中心にメロの上下が凄まじいです。具体的には、【わたしm2A#地[が]hiF裏–hiE–hiD–m2C地[い]の]ち]を]】のように、【地声mid2A#⇒裏声hiF】【裏声hiD⇒地声mid2C】といった急激なメロのアップダウンが見られます。そのため、器用な地声と裏声の使い分けが不可欠になります。慣れないうちは、裏声を使わずに地声レンジだけで歌うのもよいかもしれません。地声レンジは標準的ですが、裏声の使い分けという点で非常に難易度が高いです。

　ちなみに、女性が同曲を歌唱する場合、キーを下げた方が歌いやすいです。今回の『メフィスト』は低音域が非常に多く、女性が原キーで歌唱するのは極めて困難だと思います。



　最後に『メフィスト』の音域についてですが、【地声最低音】mid1A(A2)～【地声最高音】mid2F(F4)、【裏声最高音】hiF(F5)で歌メロディーが構成されております。地声レンジは一般的な男性の音域の範囲内（低音は低い）、裏声レンジは非常に高いです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1AはAメロで登場します。このmid1A辺りは男性の音域としては低く、人によっては発声が難しいかもしれません。今回はmid1A#,mid1C辺りも登場し、とりわけmid1Cは回数が非常に多いです。裏声のhiFなど高音域に目が向かいがちですが、『メフィスト』はmid2A以下の低音域の割合が高く、そちらも手を抜けません。

　次に、地声最高音mid2Fはラストサビで登場します。登場回数は１回のみです。同曲は地声高音についてはmid2C辺りが多く、mid2D～mid2F辺りはそこまで多くありません。そのため、標準的な音域の男性でも比較的マッチしやすいと思います。逆に、mid2F～hiC辺りの地声の中高音域が得意な男性は少し歌いにくく感じられるかもしれません（J-POPではこのレンジが歌える人の方が歌える楽曲が多い印象ですが…）。

　『メフィスト』は裏声でhiC～hiF辺りの音階が頻出します。そのため、器用な裏声発声が重要になります。裏声は地声に比べると音域が広がりやすいですので、毎日少しずつ練習を重ねてください。ただ、今回のようなアップダウンの激しいメロによる使い分けは非常に特殊であり、しっかりとした練習が必要になりそうです。


　『メフィスト』は音域自体がかなり広いため、キー調整は行いにくいです。女性や高音域が得意な男性などはキーを上げてもよいかもしれませんが、音域自体が極めて広く、どこかしらで歌いにくい場面が出てきやすいです。その点はしっかりと留意しておいてください。

　『メフィスト』を原曲キーで歌唱する場合、hiC～hiFといった裏声音域をしっかり歌いこなせることが求められます。一方、地声レンジはどちらかといえば低めの男声域であるため、高音域が得意な男性だと逆に辛いかもしれません。おおよその目安ですが、「標準よりやや低め～標準より高めの音域の男性」辺りが原曲キーに合いやすいと私は判断しました。ただ、同曲は裏声の力量が絶対的に重要になりますので、その辺りをしっかり克服しておきたいです。


　『メフィスト』はアッパーなバンド曲であり、カラオケなどでも歌いやすいと思います。歌詞については、どことなくほの暗さや闇が見え、そうした点が魅力でもあります。興味を持たれた方はチャレンジしてみてください。