『あのね』(あいみょん)の音域 / 映画『窓ぎわのトットちゃん』主題歌

　まず、『あのね』についてです。この楽曲は、２０２３年に女性シンガーソングライターのあいみょんさんによりリリースされたシングル作品です。配信限定のシングルとして発表されたのちに、CDシングルとしてリリースされました。この記事の執筆時点で最新シングルであるため、アルバムには未収録です。

　さて、『あのね』はタレント黒柳徹子さんの同名小説を原作としたアニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』の主題歌として書き下ろされました。同小説は黒柳さんの自叙伝的物語で、日本のみならず世界的に広く出版されております。２０２３年１２月時点で、日本国内では８００万部、全世界での累計発行部数が２５００万部を超えております（私自身も小学生の頃に読んだ記憶があります）。

　『あのね』はスローなバンド曲です。最近のJ-POPとしては珍しく演奏時間が６分を超えております（アウトロが１分超と長め）。歌メロについては、AメロBメロサビと展開し、親しみやすい展開をします。さくしさっきょくはあいみょんさん、編曲は 立崎優介さん、近藤隆史(Q.,Ltd)さん、田中ユウスケさんのきょうどうでなされました。3者はいずれもあいみょんさんと縁の深いアレンジャーです。


　『あのね』の音域的な特徴についてです。同曲は、大よそ一般的な女性の音域の範囲内で歌メロが作られております。そのため、一般的な音域の女性が原曲キーで歌唱することも可能なのではないかと私は推測ました（「高音域が得意な女性」などは少しキーを上げるのもよい）。
　同曲は、地声最高音hiCが２回程度登場し、サビではhiAが地声高音のピークとなります。そのため、ヒットチャートを賑わすようなJ-POP女性曲としては高音が控えめです。全体でみると、特にBメロが中高音が際立ちます。低音ではmid1G,mid2A辺りが比較的多いので、高音域が得意な女性は若干低く感じるかもしれまん。

　同曲を男性が歌唱する場合、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。ただ、今回は地声高音がhiCであり、サビのピークがhiAであるため、「高音域が非常に得意な男性」だと原キーマッチする可能性があります。厳密に考えると、キーを少し下げた方がより安定すると思いますが、人によっては原キーを選択肢に入れてもよいと思います。



　最後に『あのね』の音域についてですが、【地声最低音】mid1G(G3)～【地声最高音】hiC(C5)、【裏声最高音】hiD(D5)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の音域の範囲内（高音がやや控えめ）です。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1GはサビやDメロで登場します。この辺りは女性の音域の範囲内です。ただ、mid2Aなどとコンボになっており、回数もやや多いです。「高音域が得意な女性」などはキーを上げるのもよいかもしれません。

　次に、地声最高音hiCはBメロで登場します。登場回数は2回程度です。hiCに次ぐ地声高音としては、hiBがピークとなる場面が全体で１回程度、hiAが全体で１４回程度登場します。地声最高音hiCは女性の音域の範囲内ですが、人によっては少し高く感じるかもしれません。今回の地声hiCが登場する場面は裏声も多いです。そのため、高音域が得意でない人は、地声hiCについても器用に裏声を使うのもよいと思います。今回の楽曲は人によってはキーを調整するのもよいですが、原キーがマッチするという人も多そうです。


　『あのね』は低音域に余地があり、キー下げは可能です。ただ、今回はmid1G,mid2Aが要所でみられるため、キーを下げ過ぎると少し歌いにくくなるかもしれません。その点は留意しておいてください。
　今回の楽曲はメロもシンプルで、分かりやすく、音域の側面から見ても練習曲に向きやすいと思います。反面、今回はスロー曲ということもあり、慣れない人だと少し歌いにくく感じられるかもしれません。場合によっては、テンポを少し上げるのもよいと思います。

　『あのね』を原曲キーで歌唱する場合、mid2G～hiCといった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。ただ、今回はhiC,hiBといった中高音はそこまで多くないため、他のJ-POP女性曲よりは高音域が取っ付きやすい印象です。反面、低音域はmid1Gなどは複数回登場します。
　こうしたことを踏まえると、「標準よりやや低め～標準より高めの音域の女性」などが原曲キーに合いやすいと私は判断しました。


【まとめ】

①J-POPの女性曲の中では高音がやや控えめ
②原キーだと「標準よりやや低め～標準より高めの音域の女性」などに合いそう
③練習曲としては使いやすいが、慣れない人は少しテンポを上げてもよい
④「高音域が得意な女性」などは少しキーを上げるのもよいかも
⑤男性だと「高音域が非常に得意な男性」は原キーで歌える可能性がある