『雑踏、僕らの街』(トゲナシトゲアリ)の音域

　まず、『雑踏、僕らの街』についてです。この楽曲は、２０２４年に５人組ロックバンド・トゲナシトゲアリによりリリースされたシングル作品です。アルバムとしては、同じ年の『棘ナシ』（とげナシ）に初収録されました。同アルバムには、『視界の隅 朽ちる音』、『誰にもなれない私だから』などのシングルが収められています。

　さて、『雑踏、僕らの街』はテレビアニメ『ガールズバンドクライ』のオープニングテーマとして書き下ろされました。ちなみに、『ガールズバンドクライ』はガールズバンドがテーマとなったアニメです、通常、こうしたアニメは出演した声優がバンドを組む（もしくはボーカルを担当する）のが一般的ですがが、同アニメはまずバンドが結成され、そこからアニメへ発展していくという形で企画が進行した点が特徴的です。


　『雑踏、僕らの街』の音域的な特徴についてです。同曲は、女性の音域としては高め（体感的には明確に「高い」）レンジで歌メロが作られています。低音域に余地があるため、一般的には少しキーを下げた方が歌いやすいと思います。
　同曲は「中低音がよく見られるABメロ」、「中高音中心のサビ」で歌メロが作られています（サビの尺も長い）。そのため、音域が広めですが、厳密にみるとABメロでもhiA～hiB等の中高音が集中する場面があります。そのため、「音域は広いが、全体でみると中高音に寄った曲」といえそうです。
　同曲は２０００年代後半以降広がったボーカロイドなどの影響が垣間見えます。そうしたこともあり、歌メロの音数が多く、メロが急激に上昇する場面もあります。そうした点も難しそうに感じました。同じバンドアニメ『ぼっち・ざ・ろっく』の楽曲などと比べてもやや取っ付きにくいのではないかと私は推定しています。

　ちなみに、男性が同曲を歌唱する場合、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。ただ、今回の楽曲は全体的に中高音に寄っているため、単純にキーを下げるよりも「キーを４～５つ程度上げて、１オクターブ下を歌う」方が合いやすいのではないかと私は考えています。人によっては１オクターブ下のレンジを歌唱できる曲です（「男性がオク下で歌える女性曲」は大体キーが高い）。また、今回は「高音域が非常に得意な男性」についても原キーで歌うのはかなり難しいと思います。



　最後に『雑踏、僕らの街』の音域についてですが、【地声最低音】mid2A(A3)～【地声最高音】hiD(D5)、【裏声最高音】hiE(E5)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の音域と比べ、高め（体感的には明確に「高い」）です。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid2AはAメロで登場します。この辺りは女性の音域の範囲内です。ただ、今回はmid2B等が連続しているため、見た目よりやや低いのではないかと思います。「高音域が非常に得意な女性」だと少しキーを上げてもよいかもしれません（原キーでもよい）。

　次に、地声最高音hiDはサビで登場します。登場回数は6回程度です。このhiDに次ぐ地声高音としては、hiCがピークとなる場面が全体で3回、hiBは推定50回超登場します（hiBは概算です）。こうしたことから、女性の音域としては高く、通常はキーを下げた方が歌いやすいと私は判断しました。一つの目安ですが、原曲キーから２～３つ程度下げてみてください。


　『雑踏、僕らの街』は低音域に余地があるため、キー下げは可能です。歌い慣れた人であれば、ある程度自分が得意とするレンジに調整することが出来そうです。一方、今回の楽曲は音域が広いため、ビギナーについては一部歌いにくい部分が出てくるかもしれません（歌い慣れた人にも難しい曲です）。
　今回の楽曲はメロディー自体は分かりやすいです。ただ、歌メロの音数が多く、また変拍子なども用いられているため、リズムなどは取りにくそうです。また、息継ぎなども大変そうであり、音域以上に難しい要素が多いと私は感じました。難易度の高い曲です。

　『雑踏、僕らの街』を原曲キーで歌唱する場合、hiA～hiDといった中高音域がしっかり歌いこなせることが求められます。今回は特にhiA～hiBがかなり多いです。また、息継ぎやリズムの難しさから見た目以上に高音感がありそうです。一方、低音域はmid2A辺りであり、大よそ標準的です。
　こうした点を考慮すると、「高音域が得意（or非常に得意）な女性」が原曲キーに合いやすいと私は判断しました。


【まとめ】

①ABメロは低音が登場するが、全体的に中高音寄り（サビが長い）
②原キーだと「高音域が得意（or非常に得意）な女性」な女性向け
③メロディー自体は分かりやすい
④リズムや息継ぎなどが難しく、音域以上に難しい曲