『無線LANばり便利』( ヤバイTシャツ屋さん ) の 音域

　まず、『無線LANばり便利』についてです。この楽曲は、２０１６年に３人組ロックバンド・ヤバイTシャツ屋さんによりリリースされたアルバム『We love Tank-top』に収録されております。同アルバムには、『あつまれ!パーティーピーポー』(過去記事)、『流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い』(過去記事)、『喜志駅周辺なんもない』いった作品が収録されております。バンドとしては、初のメジャーフルアルバムになります。

　さて、『無線LANばり便利』はアルバム曲でありながら人気も高く、カラオケなどでも良く歌われているようです。元々はノンタイアップの曲でしたが、２０１９年には九州電力系のインターネットサービスBBIQのCMソングとしてタイアップが付きました。私自身も九州在住ですので、TVやネットのCMで多く耳にした楽曲です。
　ちなみに、同曲のミュージックビデオは、ボーカル＆ギターのこやまたくやさんの自宅で撮影されております。


　『無線LANばり便利』はアッパーなバンド曲です。１秒程度のドラミングの直後に歌メロ（歌イントロのようなメロ）がはじまり、AメロBメロサビと展開します。全体的に元気のいいメロコアナンバーであり、演奏時間も３分程度とコンパクトです。歌詞は無線LAN（およびWi-Fi）がテーマとなっており、「通信制限なくネットが楽しめる」という点が先述のタイアップにもマッチました。リリースから７年が経過しましたが、今でもネット環境（スマホ環境）あるあるで共感できる人も多いのではないかと思います。

　『無線LANばり便利』の音域的な特徴についてです。同曲は、男性と女性のツインボーカルで歌メロが作られております。まず、男性パートについては、男性の音域としては高いです。一般的には少しキーを下げた方がより歌いやすいのではないかと推測されます。
　同曲の男性パートはmid2F#～hiA#辺りが頻出するメロとなっており、高音感があります。サビの「無線LAN LAN LA LAN」のところは低音パートとなります。そのため、男性パートは全体的に高いもの音、低音～高音まで広く求められます。

　一方、女性パートは「標準よりやや高め」のレンジで歌メロが作られております。一般的には少しキーを下げた方が歌いやすいのではないかと推測されます。
　女性パートの場合、最低音がmid2A#になります。今回の楽曲は最高音がhiD#（女性としては高め）ですが、全体でみるとhiA#辺りが多く、標準的な女性でも歌える場面が多いです。また、キー調整も女性の方が調整しやすく、マッチする人も多いのではないかと思います。



　最後に『無線LANばり便利』の音域についてですが、【地声最低音】mid1D#(D#3)～【地声最高音】hiD#(D#5)で歌メロディーが構成されております。男性パート（mid1D#[D#3]～hiA#[A#4]）は一般的な男性の音域としては「明確に高く」、女性パート(mid2A#[A#3]～hiD#[D#5]))は「やや高め～高め」といったところです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1D#はサビの男性パートで登場します。女性パートは１オクターブ上を歌唱していますので、女性の場合は１オクターブ上を歌うとよいのではないかと思います（女性の場合hiD#などが登場しますが）。

　次に、地声最高音hiD#はサビの女性パートで登場します（男性パートは１オクターブ下を歌唱）。登場回数は２０回程度とかなり多いです。この辺りは女性の音域としては高く、通常は少しキーを下げた方が歌いやすいのではないかと推測されます。一つの目安ですが、原曲キーから１～２つ程度下げてみてください。
　一方、男性パートの最高音はhiA#であり、こちらはイントロやAメロBメロなどで多く見られます。男性パートもmid2F#～hiA#辺りが多いため、原曲キーが２～３つ程度下げるとより歌いやすくなります。


　『無線LANばり便利』は低音域には余地があるため、キー下げは可能です。男女のデュエット曲はキー調整が難しいことが多いのですが、今回の楽曲については、比較的キー調整がしやすく、歌い慣れた人であれば、ある程度自分が得意とするレンジに調整することができるいえます。一方、大きなキー調整にはやはり向きにくいので、ビギナー向けには少し融通が利きにくいかもしれません。ただ、女性がソロで歌う場合は、もしかしたらビギナーでも合う可能性があります。
　同曲のメロディーは比較的分かりやすく、音域が合うのであればカラオケなどに向きやすいです。個人的にはヤバTの作品では比較的取っつきやすいのではないかと推測しております。


　『無線LANばり便利』を原曲キーで歌唱する場合、男性はmid2F#～hiA#、女性はhiA#～hiD#といった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。とりわけ男性は中高音域が多く体力が求められます。
　こうしたことを踏まえると、男性パートは「高音域が得意な男性」、女性パートは「標準よりやや高め～高音域が得意な女性」などが原曲キーにマッチしやすいと私は判断しました。先述のように、今回は女性が1人でも歌いやすく、女性の方がおすすめです（1人で歌う分、息継ぎなどは大変です）。


【まとめ】

①男性パートはサビ以外は中高音寄り（サビは副旋律だと中低音中心）
②女性パートは最高音がやや高いが、男性よりはマッチしやすそう
③原キーだと男は「高音域が得意な人」、女性は「標準よりやや高め～高音域が得意な人」向け
④キー調整は可能であり、女性ソロだとビギナーにも向く可能性がある（息継ぎは大変）
⑤メロディーなどは分かりやすい。