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『ヒッチコック』(ヨルシカ)の音域と感想

 こんにちは。今回はヨルシカの『ヒッチコック』(2018)を取り上げたいと思います。よろしくお願いします。


『ヒッチコック』(ヨルシカ)、Hitchcock(Yorushika)


『ヒッチコック』(ヨルシカ)










【地声最低音】mid1G#(G#3) 

[大]人になると忘れちゃうものなんですか。(Cメロ)


【地声最高音】hiA#(A#5)  ※曲全体で頻出します

★さよならって言[葉]でこんなに胸を裂いて(Bメロ)
★先生、hiA#[人生相]談です。この先どうなら楽ですか。(サビ)
★そんなの誰もわかりはしないよなんて言われますか。[ほ]


【裏声最高音】hiC#(C#5) 

★何もしないで生きhiC裏[てい]hiC#裏[たい]。(サビ)
★花の散り際にすら値が付くのもい[や]になりhiA#[まし]た。(Cメロ)



 まず、『ヒッチコック』についてです。この楽曲は2018年にヨルシカによってリリースされたミニアルバム『負け犬にアンコールはいらない』に収録されているナンバーです。このアルバムには、『ただ君に晴れ』なども収録されています。『ヒッチコック』はアルバムの発売に先立ち、ヨルシカのYouTube公式チャンネルでもMVが公開され、2019年5月現在、2200万回もの再生回数を記録しています。人気の高い楽曲の一つです。

 『ヒッチコック』のサウンドについてですが、バンドサウンドが基調となったミディアムテンポのポップナンバーです。中心メンバーの一人でもあるn-bunaさんのエレキギターが非常に印象的です。近年「ロックバンドのロック離れ」という矛盾したような現象をよく耳にし、洋楽などを中心にギターのサウンドが目立たない楽曲も非常に増えてきました。その中で、ヨルシカの楽曲で流れるギターサウンドは非常に心地よく感じます。
 メロディーについては、良い意味で淡々としたニュアンスで歌われていると思います。あとで言及しますが、地声の音域自体はあまり広くありません。これは歌詞の性質なども反映していると思います。よく出来た聴きやすいメロディーですが、歌詞に重きが置かれていると思いました。

 さて、歌詞についてです。まず、1番のBメロで「さよならって言葉でこんなに胸を裂いて 今もたった数瞬の夕焼けに足が止まっていた」とあります。大切な人との別れにより、主人公の時間が止まったような状況が描かれています。その中で楽曲全体を通して、「生きていくことの息苦しさ」が描かれています。

 タイトルの『ヒッチコック』ですが、サスペンス映画の神様であるアルフレッド・ヒッチコックからの引用です。ヒッチコックが残した功績は様々ですが、歌詞と関連する部分だと、「マクガフィン」という概念が関係すると思います。「マクガフィン」とは「登場人物への動機付けや話を進めるために用いられる小道具など」を意味します。「怪盗が狙う宝石」などが例です。宮崎駿アニメで言えば、『天空の城ラピュタ』の「飛行石」などもそうです。
 歌詞中では「青春って値札が背中に貼られていて ヒッチコックみたいなサスペンスをどこか期待していた」とあるように、「青春という値札」あるいは歌詞に暗喩的に登場する「君」がそうした動機付け(マクガフィン)となるものだと言えます。「大切な人との別れ」は「マクガフィン(「私」が人生を進める動機付け)の喪失」を意味しているのだと思います。主人公が歌の中で淡々と語る虚無感は、「別れ」による喪失感を象徴していると思います。

 



 さて、『ヒッチコック』の音域についてですが、【地声最低音】mid1G#(G#3) ~【地声最高音】hiA#(A#5)、【裏声最高音】hiC#(C#5)でメロディーが構成されております。地声だけで見ると、一般的な女性の音域の範囲内であると思います。

 『ヒッチコック』はあまり歌い慣れない女性であっても形になりえる歌いやすい楽曲だと思います。当然、「歌い慣れていない人でもバッチリ歌いこなせる」ということを意味するわけではありませんので、練習しておくに越したことは無いです。歌い慣れた人とそうでない人とでは当然差が出ます。努力が報われやすい楽曲であるとも思います。歌い慣れない人は、キーを下げるのもアリだと思います。逆に声が高い女性は、キーを上げることもあり得るかもしれません。


 ちなみに『ヒッチコック』は声が高い男性であれば歌いこなすことも可能だと思います。少年性を帯びたような声質の方が原曲のニュアンスを崩さないと思います。

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