『このまま君だけを奪い去りたい』( DEEN ) の 音域

　まず、『このまま君だけを奪い去りたい』についてです。この楽曲は、１９９３年にロックバンドDEENによりリリースされたシングル作品です。アルバムとしては、１９９４年に発表されたフルアルバム『DEEN』に初収録されました。同アルバムには、『永遠をあずけてくれ』、『瞳そらさないで』、『Memories』といったシングル曲が収められております。アルバムは、１５０万枚を超えるCDヒットを記録し、日本レコード協会よりミリオン認定がなされました。

　『このまま君だけを奪い去りたい』は、バンドのデビュー曲です。同曲は、NTTドコモの発売する小型通信機器「ポケットベル」のCMソングとしてタイアップが付きました。楽曲の質も相まって、同曲はデビューシングルとしては異例のメガヒットになり、１３０万枚のCDセールスを記録しました。ヒット曲の多いバンドですが、DEENとしては最大のセールスであり、バンドの代表的な１曲です（綿毛さんのツイートより引用）。バンドのYouTube公式チャンネルで公開された動画も、１年足らずで既に９９０万回に達しております（２０２４年１月現在）。

　『このまま君だけを奪い去りたい』はスローなバンド曲です。全体的にメロディアスであり、歌メロもAメロBメロサビと親しみやすい展開をします。作詞は、当時WANDSのボーカルだった上杉昇さん、作曲は織田哲郎さん、編曲は葉山たけしさんによりなされました。
　ちなみに、同曲は元々、WANDSの楽曲としてリリースされる予定だったそうです。ただ、タイアップ調整の関係で破談になり、DEENの楽曲として発表されることになったそうです。よく知られた楽曲ですが、個人的にはこうした経緯なども面白く感じました。


　『このまま君だけを奪い去りたい』の音域的な特徴についてです。同曲は男性の音域としてはやや高め（もしくは「高め」）のレンジで歌メロが作られております。低音域に余地があるため、一般的にはキーを下げた方が歌いやすいです（原キーで歌える人も一定数おられるかもしれませんが）。
　同曲はAメロBメロサビと盛り上がっていきます。ただ、そうした中でも比較的高い頻度でmid2D#～mid2Fなどが登場するため、全体的に中高音寄りになっています。そのため、ある程度高音域が得意な人の方がマッチしやすいと思います。

　ちなみに、女性が同曲を歌唱する場合、通常はキーを上げた方が歌いやすいです。今回は低音域でmid1F,mid1D#などが登場するため、この辺りが女性にとって一つのハードルになります。過去に同曲をカバーした女性歌手の傾向を見ると、原曲キーから４～５つ上げていることが多いようです（mid1G[mid1G#]～hiC[hiC#]に調整される）。この辺りが1つの目安になりそうです。



　最後に『このまま君だけを奪い去りたい』の音域についてですが、【地声最低音】mid1D#(D#3)～【地声最高音】mid2G#(G#4)で歌メロディーが構成されております。一般的な男性の音域とっしてはやや高め（or高め）です。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1D#はAメロで登場します。この辺りは男性の音域の範囲内です。ただ、「高音域が非常に得意な男性」などは少し歌いにくい可能性もあるため、少しキーを上げるのもよいと思います。

　次に、地声最高音mid2G#はサビで登場します。登場回数は全体で９回程度です。この辺りは男性の音域としてはやや高く、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。一つの目安ですが、原曲キーから１～2つ程度下げてみてください。


　『このまま君だけを奪い去りたい』は低音域に余地があり、キー下げは可能です。歌い慣れた人であれば、ある程度自分が得意なレンジに調整することができると思います。一方、今回は音域もそこまで広くないため、ビギナー向けの調整もある程度可能なのではないかと私は推測しました。
　同曲はメロディーが良く、リズムもそこまで難しくありません。ただ、バラード曲であるため、慣れないと少し歌いにくい可能性があります。場合によってはテンポを上げて練習するのもよいと思います。歌メロの良さが活きやすい作品ですので、正確な音程はもちろん、表現力にも磨きをかけておきたいです。

　『このまま君だけを奪い去りたい』を原曲キーで歌唱する場合、mid2D#～mid2G#といった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。今回はほぼ地声ベースでの歌唱であり、mid2Fなどが多く、意外と中高音寄りです。そのため、相対的に高音域が得意な男性の方が有利に働きやすいです。
　こうしたことを踏まえると、「標準よりやや高め～ある程度高音域が得意な男性」などが原曲キーに合いやすいと私は判断しました。また、原曲と若干違うニュアンスになりますが、mid2G,mid2G#辺りで上手く裏声を駆使して歌うと、「標準的な男性」でも合う可能性があるのではないかと私は推測しております。


【まとめ】

①AメロBメロサビと盛り上がる。最高音が滅茶苦茶に高いわけではないが、中高音寄り。
②原キーだと「標準よりやや高め～ある程度高音域が得意な男性」などに合いそう
③メロがよく、歌の良さが活きやすい（カラオケ向き）。
④キー調整もしやすいが、慣れない人はテンポを少し上げるのもよい