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『First Love』(宇多田ヒカル)の音域[1998年]

 こんにちは。今回は宇多田ヒカルの『First Love』(1998)を取り上げたいと思います。よろしくお願いします。今回は自選曲になります。


『First Love』(宇多田ヒカル)、First Love(Hikaru Utada)
『First Love』(宇多田ヒカル)の音域






【地声最低音】mid1E(E3) 

m1G[さ][ご]m1F#[の]キス[は]F#[タ][バコの] fla[vo]r がし[た]【Aメロ】
★立ち止m1F#[まる]時間がうm1E[ご]き出そうとしてる【2番Aメロ】

mid1F#,mid1G辺りがAメロで多い。

【地声最高音】hiD#(D#5)  ※ラストサビ[転調+1]で1回登場

★いつかhiChiA#[だ][か]と][た]ChiC#[こ[い]hiD#[に落][ち][も]ぉ]C#C【ラストサビ[転調+1]】

※1~2番サビではhiD

【裏声最高音】hiF(F5) ラストサビ[転調+1]で2回

★(You are always gonna) hiD#[be] hiF[the o][ne]D#【ラストサビ[転調+1]】
hiC[まだ]ChiC#[し[い] hiD#hiF[lo[v]e] C[so]n[g] yeah


【補足】hiAhiDを含むフレーズ一覧

★明日の今頃には あなたはどhiA[こに]いる[ん]hiB[だ][ろ]【Bメロ】
★誰を想ってるhiA[ん]hiD裏[ろう]

★今はまだ悲しい hiD裏[love] song【通常サビ】
★新hiA[し]hiB[い]hiD裏[た]hiC[た]B[え]る[ま]で

hiC[You] hiA#[are] CA#[al][ways] gonna [b]e [m]y [love]C【ラストサビ[転調+1]】
★I’ll remem[ber]hiA# hiC[t]o love A#[You] taught me [h]ow

 まず、『First Love』(ファーストラブ)についてです。この楽曲は、1998年に女性シンガーソングライターの宇多田ヒカルさんによりリリースされたアルバム『First Love』に収められております。同アルバムには、宇多田さんの1枚目のアルバムであり、デビュー作で大ヒットした『Automatic』、2ndシングルの『Movin’ on without you』といったシングル曲が収録されております。アルバム自体は、日本全体で700万枚を売り上げる記録的なヒットになりました。同アルバムは日本国内のアルバムセールス歴代1位を記録し、今も破られておりません

 『First Love』はテレビドラマ『魔女の条件』に主題歌に抜擢されました。魔女の条件は滝沢秀明さんと松嶋菜々子さんの主演であり、男子生徒と女性教師の恋を描いたドラマです。同ドラマは最終回では30%近い高視聴率を記録、ドラマの主題歌である『First Love』もシングルカットされ、100万枚近いヒットを記録しました。
 宇多田ヒカルさんは当時15歳でしたが、シングルおよびアルバムの『First Love』は日本のポップシーンやリズム&ブルース(R&B)を語る上で特に重要な作品となっております。この1998年は、MISIAさんなどもデビュー・ヒットした年であり、日本のR&Bの飛躍の年にもなりました。


 さて、『First Love』は、ピアノを基調としたバラードです。作詞作曲は宇多田ヒカルさん、アレンジは河野圭さんによりなされております。河野さんは、宇多田さんの初期の作品に多く携わっており、人気のシングル曲などのアレンジを担当しております。
 同曲は歌メロはAメロBメロサビといった形で作られております。ボーカルの表現はR&B色が非常に強いですが、歌メロ自体はこれまでのJ-POPを多く聴いてきた人にも馴染みやすいものになっております。ラストサビでは転調が行われ、キーが1つ上がります。


 『First Love』の声域的な特徴についてです。同曲は、ラストのサビでhiD#が地声で1回登場する等、女声としてはやや高い部分があります。反面、Aメロなどは低音域が多く登場します。また、サビの高音域では裏声が多用されており、音域自体がかなり広いです。宇多田さんはエッジボイス(ガラガラしたような声)を多く使っておりますが、こうした発声は低音域を歌う際にも有用であります。
 同曲は、音域が広く、その点で歌い慣れた人向けの作品であります。歌唱表現についても、同じメロで地声とファルセット(かすれるような裏声)を使い分けるなど、非常に繊細であります。表現の学びが多いのではないかと私は強く感じました。


 最後に『First Love』の音域についてですが、【地声最低音】mid1E(E3)~【地声最高音】hiD#(D#5)、【裏声最高音】hiF(F5)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の声域より高めで、音域も広いです。以下、見ていきます。

 まず、地声最低音mid1Eについては2番Aメロで登場します。このmid1Eは私自身は絶対的に必要というわけではないと思います。歌い慣れていない人や低音が苦手な方はそこまでこだわらなくてもよいです。
 その他の場面では、Aメロでmid1F#とmid1Gが連続して登場します。この辺りが低音の一つの目安になり、しっかり歌いこなしたいところです。宇多田さんはややザラついた声質で歌われておりますが、こうしたエッジがかった発声は低音の表現の手助けになります。私自身は男性なので、女性と声域が異なるのですが、私個人に関しては、大体mid1Dより低い音階になると、エッジがかった発声をすることが多いです。

 一方、地声最高音hiD#はラストのサビで1回だけ登場します。同曲はラストのサビで転調してキーが1つ上がります。そのため、1~2番のサビでは最高音がhiDになります(こちらも各サビで1回ずつ登場)。hiD,hiD#の登場回数はそこまで多くないですが、高音域が苦手な方はスムーズ発生するのが難しいと思います。よって、各々の状況によって、少しキーを下げてもよいと思います。同曲はR&B曲でありますので、hiDなどの場面を裏声で歌唱してもよいと私は考えました。


 『First Love』は音域自体が広く、低音もAメロで多く登場します。よって、キー下げなどは行いにくいです。歌い慣れた人が少しの調整をするのはよいと思いますが、ビギナーなどが自分の合いやすいレンジに調整するのは難しいかもしれません。そうした点で、歌い慣れた人向けの作品といえます。また、裏声の表現なども多く、テクニック面でも難しさがあります。
 同曲を原曲キーで歌唱する場合、サビ等で地声hiC辺りがしっかり歌いこなせる力が求められます。また、裏声と地声のしっかりとした使い分けが必要です。地声の高音自体は滅茶苦茶に高いというわけではないと思いますが、全体として繊細な表現が多く、歌いこなすのは大変です。ただ、その分、学びが非常に多い楽曲ではないかと思います。発声自体は非常にテクニカルですが、歌メロは歌謡的ですので、宇多田さんの他の人気曲などと比べると、リズムは取りやすいと思います。
 
 『First Love』は1998年リリースで20年以上も前の作品ですが、今もなお愛され続ける楽曲です。興味を持たれた方はチャレンジしてみてください。

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