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『美しい棘』(GLIM SPANKY)の音域と所感【加筆】

(2019/02/09)初投稿
(2019/03/19)最低音域が記載ミスされていましたので画像と共に修正しました
(2019/10/25)hiA~hiDの音域の該当箇所について詳細に記載しました。解説部分も一部修正加筆しております。

『美しい棘』(GLIM SPANKY), Utsukushii Ibara(GLIM SPANKY) 
3rd Mini Album『I STAND ALONE』収録(2017年4月12日)


【地声最低音】mid1E(E3)

十字架の見える窓で風がf遊(そ)ぶ度 プリーツを揺らすよ

【地声最高音】 hiE(E5) ※楽曲全体を通して8回登場します

hiE[少]hiB[女は]hiA[い][ま]


【補足】hiAhiDの注意箇所

★十字架の見えhiA[るま]どで(Aメロ)
★棘に刺さりなhiA[が]hiB[ら]
[~]hiC#(サビ)
hiA[深い傷]hiB[を]A[増]hiC#[やし]hiA[て]
★喜hiD[び]hiC#[を]hiA[知っ]ていく
★もう知hiC#[ら]hiB[ぬ]hiA[人]

言われなくとも私hiA[た]ち馬鹿じゃない(Cメロ)
hiA[そう魔法]の様hiB[で][~]hiC#(ラストサビ)


『美しい棘』(GLIM SPANKY)









 こんにちは。今回は
GLIM SPANKY(グリムスパンキー)の『美しい棘(いばら)』を取り上げます。よろしくお願いします。
 まず、
GLIM SPANKYとは長野県で結成された男女2人組ロックユニットで、1960~70年代のガレージロックやブルースロックの影響を色濃く受けたサウンドを展開しています。GLIM SPANKYというグループ名は、ケルト伝説に登場するゴブリンの持つ灯火を意味する『GLIM』と、平手打ちを意味する『SPANK』を掛け合わて名付けられたそうで、幻想的かつ攻撃的な音楽性を表現しているそうです。
 彼らを有名にした作品は2016年にリリースされた2枚目のアルバム『Next One』に収録された『怒りをくれよ』だと思います。『怒りをくれよ』は映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌として書き下ろされた作品であり、多くの人の耳に触れることになりました。

 今回取り上げる『美しい棘』は3枚目のミニアルバムの収録曲として、2017年にリリースされたものです。この楽曲は彼らの音楽性で言うならば『幻想的』なニュアンスが強い作品となっており、ギターのサウンドも力強さはあるものの、全体的に哀愁を漂うものになっています。一方で、ボーカルについては、サビの部分で非常に尖ったな発声をしており、攻撃的な音楽性も残しています。
 また、ベースギターを音楽プロデューサーの亀田誠治さんが担当しております。亀田さんは私の好きなベーシストの一人です。
【美しい棘】


 ボーカルの松尾レミさんは、1960年代に活躍した米国人の女性ロックシンガーの
ジャニス・ジョプリンを思わせるハスキーな声質をしており、そのことが、返って柔らかで哀愁深いメロディーラインを際立たせていると思います。私自身は、1960~70年代の古典的なロックに触れてきた世代に特に突き刺さる楽曲なのではないかと考えます。
 ちなみにGLIM SPANKYは、ジャニス・ジョプリンの『MOVE OVER(邦題:ジャニスの祈り))』をカバーしています。こちらは『SUZUKIワゴンR』のCMでタイアップとして使用され、聴いたことがあるという人も多いかもしれません。

GLIM SPANKY『MOVE OVER(邦題:ジャニスの祈り))』

 
 次に『美しい棘』は歌詞について述べます。歌詞については現代的な面も残しつつ、1970年代の荒井(松任谷)由実さん、吉田拓郎さんなどを想起させるような作りになっていると思います。この楽曲の特徴は歌詞の以下の部分に分かりやすい形で表れているでしょう。

誰も邪魔をしないで わたし今が全てだから
儚く綺麗な時 大人には解んないでしょう

 そして、歌詞全体を通して、「『今』という儚く綺麗な時の中で、一人の少女が、傷を増やしながら経験を重ねていく(愛に傷付き、愛に癒されていく)」様子が美しく描かれています。

今までとなりに居たあなたから手を離せば最後 もう知らぬ人

というフレーズ。まさに傷を増やして、成長を重ねていく思春期の姿ではないでしょうか。思春期とは人生の中でも非常に出会いと別れの多い時期です。学校では小中高大と進む中で、多くの人と出会い、別れを重ねていく。人生の中で「出会い別れの入り乱れる時期」があるのはまさにこの時だけだと思います。
 そして、そうした思春期の「別れ」をこれほど乾いた形で表現できるソングライターは多くないと思います。と同時にこの『美しい棘』が長く愛される楽曲になってほしいと私自身は感じています。
 

 さて、『美しい棘』の音域ですが、地声最低音 mid1E(E3)~地声最高音 hiE(E5)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の音域よりもやや高めです。
 
 まず、GLIM SPANKYのボーカル松尾レミさんは、非常にハスキーな声質であります。ただ、実際にカラオケで歌ったり、ライブで歌唱したりする際、松尾さんのハスキーは部分は無理に再現しなくても良いといます。原曲のニュアンスは崩れてしまうかもしれませんが、メロディーラインが美しく、歌詞も素晴らしいですので、「しっとり歌う」という形でも恰好が付くのではないかと個人的には考えています。また、「女は今~」の色付きの部分、「びを知っていく」の赤字の部分は裏声で対応するというのもアリではないでしょうか。一般的な女性の場合は、少しキーを下げた方が歌唱しやすいと思います。
 
 一方、『美しい棘』の音域は女性の音域と比較してかなり広いです。 そうした特徴もあり、キーを下げて歌唱したり、練習曲にしたりすることにはあまり向かないと言えます。少しキーを下げて歌唱するといったことは可能であると思います。しかし、普段歌い慣れていない人がキーを大きく下げて歌唱するといったことには向きません。あまり声を出すことに慣れていない人は、別の曲で歌い慣れた上で歌唱するのが良いと思います。

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