当ブログにおいて、スピッツに関連する楽曲は女優の上白石萌歌さんがCMでカバーした『楓』を特集したことがありました。スピッツ単体では初登場です。
スピッツは90年代のアーティストでは珍しくyoutubeでMVをフル尺公開しております。また、高音域がきついものの、使用音域自体は広いわけではないので、キー調整をすれば手をつけやすい作品が多いです。当ブログでも積極的に取り上げていけたらと思います。
『チェリー』(スピッツ)、Cherry(Spitz)
1996年4月10日発売【アルバム『インディゴ地平線』収録】
【地声最低音】 mid1E(E3) ※Aメロ
★君を忘れない 曲がりくねっ「た」道を行く
【地声最高音】 hiA(A4) ※サビ部分
★”愛してる”の響(ひ[び])「き」[だ]け[ーで] 強くなれ[る]気がしたよ[mid2G]
【フェイク 】 hiC(C5) ※Cメロ部分ラスト
★ 春の風に舞う花びらに変えて Fu~
まず、『チェリー』についてです。この楽曲は4人組ロックバンド・スピッツの13枚目のシングルとして1996年にリリースされました。彼らの代表曲の一つと言っていいと思います。
この楽曲はノンタイアップであったにも関わらず発売当初のセールスも非常に好調でした。しかし、特筆すべきはyoutubeのスピッツ公式チャンネルにおいて、2019年現在で再生回数が6200万回を超えていることだと思います。20年以上前の楽曲が今も古びずに愛され続けているという稀有な例です。若い世代の方は、学校の合唱曲などで初めて知ったという人も多いのかもしれません。また、アコースティックギターの練習曲として認知されている印象もあり、多くのミュージシャンにもカバーされております。
『チェリー』のサウンドは、ドラムとギターのアルペジオから始まり、小気味のよいベースラインと美しいメロディーが全編に渡って展開されるポップの側面としてのスピッツらしい楽曲です。編曲はスピッツと笹路正徳さんにより行われております。笹路正徳さんはスピッツなど様々なミュージシャンのプロデュースで知られていますが、最近は2018年に話題になった『獣ゆく細道』(椎名林檎と宮本浩次)の編曲でも知られています。
『チェリー』の歌詞としては、『別れ、新たな旅立ち』といったテーマが描かれております。まさに今のシーズンにぴったりの楽曲です。歌詞の中で印象に残っているフレーズは「きっと 想像した以上に 騒がしい未来が僕を待ってる」、「ささやかな喜びを つぶれるほど抱きしめて」の部分です。
前者は必ずしもポジティブとはいえない「騒がしい」という言葉を使うことで聴き手に「未来」への解釈の余地を与えています。小技が利いた表現だと思います。後者は「ささやかなもの」や「小さなもの」、「些細なもの」に美しさや愛らしさを見出す日本人らしい表現であり、スピッツ草野マサムネさんの得意技でもあると思います。バブル景気の名残のある90年代半ばに、こういう楽曲が制作されたという点がスピッツというバンドの特異な点なのかもしれません。
さて、『チェリー』の音域についてですが、地声最低音 mid1E(E3)~地声最高音 hiA(A4) 、フェイク hiC(C5)でメロディーが構成されております。 低音部分はあまり多くなく、中音域が非常に多いです。一般男性の音域よりは少し高いですが、スピッツの楽曲の中では手をつけやすい作品であると思います。
高音域が苦手な人、歌い慣れていない人はキーを2程度下げる(♭2程度)と良いと思います。また、フェイクのhiC(C5)部分についても、苦手な人はわざわざ意識しなくてもよいでしょう。
スピッツの楽曲は音域をフルに使うような楽曲が少ない印象です。つまり、「キーを下げたら、今度は低音部が出にくい」といった失敗が起こりにくいのです。メロディー自体が美しく、キーも広すぎるわけではないので、キーが合わない人は調整して、歌うと良いと思います。テンポも速くないので歌の練習などにも適していると思います。
また、『チェリー』は女性が歌っても違和感が無い楽曲だと思います。キーの低い女性は原曲のままでも良いかもしれません。一般的な女性は少しキー(#2~3が目安)を上げると良いと思います。
スピッツの多くの楽曲に言えるのですが、「性差を問わない歌詞が非常に多く、メロディーも美しい」ため、女性が歌っても違和感がないものが多いです。今後、スピッツの楽曲を取り上げる際は、「男性は少しキーを下げるとよい」「女性が歌っても様になる」といったフレーズを多く使うと思います。