『美しい鰭』(スピッツ)の音域 『名探偵コナン 黒鉄の魚影』主題歌

　まず、『美しい鰭』（うつくしいひれ）についてです。この楽曲は、２０２３年に４人組ロックバンド・スピッツによりリリースされたシングル作品です。アルバムとしては、同じ年の５月にリリース予定の『ひみつスタジオ』に収録が見込まれております。同アルバムには、『紫の夜を越えて』(過去記事)、『大好物』(過去記事)といったシングル曲が収められる予定です。

　『美しい鰭』は青山剛昌さんの漫画を原作としたアニメ映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』（くろがねのサブマリン）のために書き下ろされました。名探偵コナンの映画シリーズはこれまで大きなヒット記録しており、最近は国内での興行収入が100億円に迫っているそうです。アニメの人気と楽曲の質も相まって、『美しい鰭』も既にストリーミングランキングで上位に位置しております。ちなみに、スピッツがアニメに楽曲提供を行うのは、オリジナルCGアニメ『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』以来14年ぶりです。


　『美しい鰭』の音域的な特徴についてです。同曲は男性の音域としてはやや高めのレンジで歌メロが作られております。低音域には余地があるため、一般的な男性は少しキーを下げた方が歌いやすいと想定されます。
　同曲はサビでの裏声が特徴的な作品であります。そのため、裏声の器用な発声が不可欠であり、カラオケなどでも注意したいところです。スピッツは人気曲『ロビンソン』では裏声が用いられておりますが、全体でみると裏声が多用された曲がそれほど多くありません。その点で、私は一つ印象に残りました。

　ちなみに、女性が同曲を歌唱する場合、通常はキーを上げた方が歌いやすいと思います。今回のが曲は、最低音がmid1Fですが、登場回数が多く、女性だと低音感が強いのではないかと想定されます。一つの目安ですが、原曲キーから２～3つ程度上げるとより歌いやすいと私には感じました。一方、「標準より低めの音域の女性」などの中には、もしかしたら原曲キーがマッチする人もおられるかもしれません。



　最後に『美しい鰭』の音域についてですが、【地声最低音】mid1F(F3)～【地声最高音】mid2G#(G#4)、【裏声最高音】hiC#(C#5)で歌メロディーが構成されております。一般的な男性の音域と比べ、やや高め（もしくは高め）です。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1FはAメロで登場します。この辺りは男性の音域の範囲内です。ただ、今回はmid1Fの登場回数が多いため、低音域が苦手な男性だと少し歌いにくいかもしれません。
　mid1Fは女性の音域の範囲内ですが、女声域としては低い方であります。女性の得意な音域を考えると、通常は少しキーを上げた方が良いと私は考えました。

　次に、地声最高音mid2G#はサビで登場します。登場回数は12回程度、いずれもmid2F#とのコンボです。この辺りは男性の音域としてはやや高く、通常は少しキーを下げた方が歌いやすいのではないかと私は考えました。一つの目安ですが、原曲キーから１～２つ程度下げてみてください。


　『美しい鰭』は低音域に余地があり、キー下げは可能です。歌い慣れた人であればある程度自分が得意なレンジに調整することができそうです。一方、ビギナー向けの調整もある程度可能ですが、サビで裏声が多用されるなど、取っ付きにくさもあります。原曲を聴いてしっかり慣れておきたいです。
　同曲はAメロの一部が８分の７拍子となっております。そのため、慣れていないと歌メロのリズムが取りにくいです。ただ、全体でみると親しみやすく、最近のJ-POPの中では取っつきやすそうな楽曲です（簡単というわけではない）。繰り返し聞いて練習していきたいです。

　『美しい鰭』を原曲キーで歌唱する場合、mid2D#～mid2G#といった中高音域をしっかり歌いこなせることが求められます。今回はスピッツの人気曲と比べると、地声高音がやや控えめなのではないかと思います。ただ、その分、サビで裏声が用いられるなど難しい部分もあります。これらを踏まえると、「標準より(やや)高め～ある程度高音域が得意な男性」にマッチしやすいのではないかと私は推測しました。また、「標準より低めの音域の女性」の中には原曲キーが合うという人もおられるかもしれません。


　『美しい鰭』はミドルテンポのノリの良いバンド曲であり、カラオケなどでも歌いやすいと思います。また、コナンの主題歌ということもあり、既に多くの人気を獲得しております。私個人としては、メロもですが、水辺を思わせるようなバンドサウンドが非常に耳に残りました。興味を持たれた方はチャレンジしてみてください。