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『楓』(スピッツ)の音域

こんにちは。今回はスピッツの『楓』(1998)を取り上げたいと思います。以前、星野源さんの『Friend Ship』を取り上げた際に、「キーがそこまで高くないのに歌いづらい曲」という話をし、『楓』について少し話題にしました。そうしたこともあり、今回ちゃんと取り上げよう思います(以前、上白石萌歌さんのカバーについて取り上げましたが、オリジナルはまだでした)。よろしくお願いします。


『楓』(スピッツ)、Kaede(Spitz)


『楓』(スピッツ)










【地声最低音】mid1F(F3) 

m1F[い]たずらなやりとりや
★心のトゲさえも 君が笑えばもm1F[う] 
m1F[か]m2F[る]がわるのぞいた穴から

【地声最高音】hiA#(A#4)  

m2G#[抱]m2G[い]G#[て]hiA#[あ]G#[る]G[いて]G#[いく]


【補足】mid2Fmid2G#の注意箇所

★さm2F[よ]m2G[な]m2G#[ら] G#[き]G[み]F[の]声を
m2F#[まば]m2F[たき]するほど長い季節が来て



 まず、『楓』についてです。この楽曲は、1998年に4人組バンドのスピッツによりリリースされたアルバム『フェイクファー』に収録されているナンバーです。その後、『スピカ』という楽曲とともに両A面シングルとしてシングルカットされました。
 『楓』はスピッツのYoutube公式チャンネルでもMVが公開されており、2019年11月現在、約4600万回もの再生回数を記録しています。ファンのみならず、非常に人気の高い作品で、多くのアーティストにカバーされております。最近では、女優の上白石萌歌さんが清涼飲料水のCMでカバーし大きな話題となりました。

 『楓』はピアノと4人のバンドサウンドが中心となったバラード曲です。歌詞は別れがテーマになっております。個人的にはボーカルの草野マサムネさんの声質が最も活かされている楽曲の一つではないかと私自身は考えております。
 ちなみに、歌詞の中には『楓』という言葉は全く登場しません。こういう点もスピッツらしいと思います。私自身は、「楓の葉が人の手のひらの比喩になっている」のではないかと解釈しています。楓の葉が散るときに、同じ木の元から、それぞれ離れ離れになっていく様が描かれているように感じます。また、エレキギターの憂いを帯びた音色は、風に吹かれ葉が落ちてゆく様を上手く表現しています。




 さて、『楓』の音域についてですが、【地声最低音】mid1F(F3) ~【地声最高音】hiA#(A#4) でメロディーが構成されております。一般的な男性の音域よりもやや高いです。以下、見ていきます。

 まず、地声最高音hiA#は各サビで2回登場します。一般的にhiA#くらいの曲だとある程度、高音域が得意な人であれば届きやすいのですが、この楓ではmid2G,mid2G#などのロングトーンが続く中でhiA#が登場します。【m2G#[抱~~]m2G[い]G#[て~~]hiA#[あ]G#[る]G[いて]G#[いく~]】といった具合です。そうしたこともあり、見た目以上に非常に難易度が高いです。
 
 以前、「ハードロックなどでは声を強く張り、コントロールすることで高音域を出すことがある」ということについて言及いたしました。そうした歌唱が出来る方であれば、この『楓』も歌いこなしやすいのではないかと思います。ただし、ボーカルの草野さん自身はハードロックのような発声ではなく、かなり柔らかく歌唱しております。ハードロックのように声を張るという方法では原曲のニュアンスは壊れてしまいやすいと思います。ただ、草野さんのような発声は非常に難しいと思いますので、ロックテイストのような発声も選択肢に入れてみても良いかもしれません。

 一般的な男性の場合、キーを下げた方が歌唱しやすいと思います。原曲キーより2つ程度下げると、最高音がmid2G#になります。ただ、この辺りでも少し高いかもしれませんので、各々微調整してください。

 ちなみに、『楓』は音域自体は広くなく、キーを大きく下げて歌唱したり、練習したりすることにも適しています。ただ、テンポが非常に緩やかなため、少し歌いにくいかもしれません。その点は留意しておいてください。
 スピッツ作品はメロディーは音域が広すぎず、キーを調整して歌唱するのに適したものが多いです。普段歌い慣れていない人は、スピッツの楽曲のミディアムテンポぐらいの作品をキーを調整して、練習曲にしてみても良いのではないかと思います。

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