『暴徒』( Eve ) の 音域

　まず、『暴徒』についてです。この楽曲は、２０２２年に男性シンガーソングライターのEveさんによりリリースされたアルバム『廻人』に収録されております。同アルバムには、人気曲『廻廻奇譚』(過去記事)、『夜は仄か』、またヨルシカのボーカルsuisさんとのコラボ曲『平行線』(過去記事)といった楽曲なども収められております。

　さて、『暴徒』はアルバムの中の１曲ですが、Eveさんのライブとアニメーションと実写映像が一体となった音楽映画『Adam by Eve: A Live in Animation』の劇中歌として書き下ろされました。同作は、アルバムの発売と同時期にNetflixにて世界同時配信が開始され、全国主要都市の一部の映画館で劇場公開もなされました。
　『暴徒』はミュージックビデオも制作されており、EveさんのYouTube公式チャンネルでMVが公開されております。公開されたMVは２０２３年１０月現在、１８００万回の再生回数を記録しており、アルバム曲でありながらも人気の高さがうかがえます。

　『暴徒』はアッパーなバンド曲です。最近のEveさんはエレクトロなどの要素を持った作品などもリリースしておりますが、今作についてはギターを基調としたバンド曲であり、Eveさんの人気曲と通ずるような普遍性がを感じます。歌メロはAメロBメロサビと展開します。作詞作曲はEveさん、編曲はNumaさんによりなされました。


　『暴徒』の音域的な特徴についてです。同曲は男性の音域としては高いレンジで作られており、音域もかなり広いです。通常はキーを下げた方が歌いやすいのですが、音域が広い分、キー調整の融通も利きにくいです。
　同曲はAメロBメロでは中低音が多く登場し、low音階なども複数回見られます。一方、サビについてはhiB,hiA#といった中高音域が多く登場し、男性の音域としては高いです。サビでは裏声も用いられるなど音域がかなり広く、歌い慣れた人向けの楽曲だといえます。低音～高音までかなり広い音域であるため、歌える人が限定されそうです。



　最後に『暴徒』の音域についてですが、【地声最低音】lowF#(F#2)～【地声最高音】hiB(B4)、【裏声最高音】hiD#(D#5)で歌メロディーが構成されております。一般的な男性の音域と比べ、高音域は高く、音域もかなり広いです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音lowF#はBメロで登場します。このほか、『暴徒』では要所でlowG#～mid1Bが多く登場する等、ABメロがかなり低くなっております。こうしたこともあり、低音域が得意かつしっかり歌い慣れておく必要があります。高音域が得意な男性だと歌いにくいかもしれません。

　次に、地声最高音hiBはサビで登場します。登場回数は全体で８回程度です。hiBに次ぐ高音としてはは、mid2G#辺りが多く登場します。こうしたことから、男性の音域としては高めであり、通常はキーを下げた方が歌いやすいです（今回の楽曲は音域が広く、キー下げが難しいですが）。


　『暴徒』は音域が広く、キー下げには向きにくいです。「高音域が非常に得意な男性」などがキーを上げることは可能ですが、一般的にはキー調整の融通が非常に利きにくい曲です。その点で難易度が高く、歌える人が限定されそうな楽曲です。
　同曲はメロディー自体は分かりやすく、音域が合う人であれば、歌いがいのある楽曲だと思います。ただ、歌メロが速く、息継ぎも大変な作品ですので、歌詞などはしっかり覚えておきたいです。

　『暴徒』を原曲キーで歌唱する場合、mid2F#～hiBといった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。今回はABメロがかなり低く、サビが高いので、低音～高音までかなり広い音域が要求されます。
　こうしたことを踏まえると、「ある程度高音域が得意な男性（低音域もしっかり歌える）」が原曲キーにマッチしやすいと私は判断しました。「高音域が非常に得意な男性」などはキーを上げることも選択肢だと思います。



【まとめ】

①ABメロがかなり低く、サビは男性としては高め（音域がかなり広い）
②原キーだと「ある程度高音域が得意な男性（低音もしっかり歌える）」向け
③音域がかなり広いため、歌える人がかなり限定される
④メロディーは分かりやすいが、メロが速く、息継ぎしにくい（歌詞は覚えておきたい）