『リベリオン』( Ado ) の 音域

　まず、『リベリオン』についてです。この楽曲は、２０２２年に女性歌手のAdoさんによりリリースされたシングル作品です。配信限定のシングル配信減としてリリースされました。比較的新しめの作品であるため、記事を執筆時点（２３年８月時点）でアルバムには未収録です。

　さて、『リベリオン』はウェルザードさんの同名小説を原作とした映画『カラダ探し』の挿入歌としてタイアップが付きました。楽曲の質も相まって、同曲のミュージックビデオは１１００万回を超える再生回数を記録しております（２０２３年８月時点）。

　ちなみに、Adoさんは同映画の主題歌『行方知れず』も担当しており、椎名林檎さんが作詞作曲編曲を手掛けております。椎名さんはAdoさん自身も憧れていたシンガーソングライターということもあって、喜びもひとしおだったようです。


　さて、『リベリオン』はアッパーなバンド曲です。全体的にパワフルな作品であり、Adoさんもロック色の強い発声で歌唱されております。歌メロはAメロBメロサビと展開、２番以降はAメロ⇒Bメロ⇒Dメロ⇒ラストサビと展開します。こうした２番サビを省略した形は最近のJ-POPでは多く見られます。従前のJ-POPと比べサビが１回少ない分、演奏時間も３分弱と短めです。ラストサビでは転調が行われキーが１つ上がるので、カラオケの際は注意が必要です。
　『リベリオン』の作詞作曲編曲はボカロPのChinozoさんよりなされました。Chinozoさんの作品については、当ブログでは以前に『グッバイ宣言』(過去記事)を取り上げております。

　『リベリオン』の音域的な特徴についてです。同曲は、女性の音域としては高い（もしくはかなり高い）レンジで歌メロが作られております。低音域には余地があるため、一般的な女性はキーを下げた方が歌いやすいです。
　同曲はAメロBメロ辺りはそこまで高い音階は多くなく、サビで一気に盛り上がります。ABメロがそこまで高くないこともあってか、サビはhiA#～hiDといった地声高音が多く見られます。サビは声を強く張った歌唱が印象的ですが、裏声も多く使用されているため、力強さとともに器用な発声も不可欠になります。

　ちなみに、男性が同曲を歌唱する場合、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。今回はロック色が強い作品であるため、男性との相性も悪くないと思います。ただ、「高音域が非常に得意な男性」がこのレンジを原曲キーで歌唱するのはかなり大変なのではないかと私は推測しております。



　最後に『リベリオン』の音域についてですが、【地声最低音】mid1G#(G#3)～【地声最高音】hiF#(F#5)、【裏声最高音】hiF#(F#5)で歌メロディーが構成されております。一般的な女性の音域と比べ、高い（もしくはかなり高い）です。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音mid1G#は２番ABメロやDメロで登場します。この辺りは女性の音域の範囲内であり、登場回数もそこまで多くはありません。今回は、厳密にいうとmid1C#が最低音ですが、セリフのようなパートで１回登場するだけなので、今回は除外してます。

　次に、地声最高音hiF#はラストサビで登場します。登場回数は１回のみですが、hiE,hiDとのコンボになっております（女性の地声レンジとしてはかなり高い）。この地声最高音hiF#を除くと、hiD#がロングトーンで１回、またラストサビでhiDが８回登場します（hiDはいずれもhiC#とのコンボ）。こうした点を考慮すると女性の音域としてはかなり高く、通常はキーを下げた方が歌いやすいです。一つの目安ですが、原曲キーから３つ程度下げてみてください。


　『リベリオン』は低音域に余地があり、キー下げは可能です。ただ、今回は音域が広いため、歌い慣れた人であってもキー調整をしても歌いにくい部分が出てくるかもしれません。キー調整を考慮しても、ある程度高音域が得意である必要があると私は分析しました。また、サビなどでは息継ぎが大変な場面もあります。そのため、歌詞などはしっかり覚えた上で、「どこで息継ぎを入れるか」といったことまで整理しておいた方がよいと思います。

　『リベリオン』を原曲キーで歌唱する場合、hiB～hiF#といった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。今回はサビを中心にこれらが登場します。これに加え、裏声の発声も不可欠です。こうしたことを考慮すると、「高音域が(非常に)得意な女性」などが原曲キーにマッチしやすいと私は判断しました。
　今回の楽曲ではAdoさんはロック色の強い声を張った歌唱をなさってます。そのため、ロック曲に慣れている人の方が原曲のニュアンスに近づきやすいと思います。ボカロPの作品ということもあり、息継ぎが大変ですので、場合によっては複数人で歌唱するのもよいのではないかと私は考えました。



【まとめ】

①原キーだと「高音域が（非常に）得意な女性」に合いそう
②AメロBメロは地声高音が控えめ、その分サビでは高音が多い
③地声が多いロック曲だが、裏声もあり、力強い発声と器用な発声が不可欠
④息継ぎが大変な場面がある（場合によっては複数人で歌うのもよい）