こんにちは。今回はイナメトオル【40mp】さんの『からくりピエロ』(2015)を取り上げたいと思います。よろしくお願いします。今回はリクエストによる選曲です。初音ミクバージョンについても触れますが、40mpさんのセルカバーバージョンをメインに記述していきます。


『からくりピエロ』(イナメトオル【40mp】),Karakuri Pierrot(Toru Iname【40mp】)


【地声最低音】mid1F(F3)  

m1F[そ]れは簡単で m1F[と]ても困難で


【地声最高音】hiA(A4)  

★きm2G[みにた]hiA[ど]り着けないままで



【補足】mid2Emid2Gの象徴的な箇所

★待ち合わせは2時間まm2F[え]で(Aメロ)
★信じられなくて 信じたくなm2F[く]て(Bメロ)

★回っm2E[て] 回っE[て] 回E[り]疲れて(サビ)
★悲しい僕m2F[の]m2G[ま]F[つ]ろだ


※初音ミクオリジナルの音域はm2C~hiDで、セルフカバーのキー+5です。音域自体はミクの方が少し狭いです。この点の詳細は後述します。
『からくりピエロ』(イナメトオル【40mp】)









 まず、『からくりピエロ』についてです。この楽曲は2011年に、ボカロPの40mp(よんじゅうメートルぴー)さんが公開した初音ミクの作品です。同年リリースされたアルバム『小さな自分と大きな世界』に収録されました。ボカロ作品の中でも人気の高い楽曲の一つだと思います。ニコニコ動画でもミリオンを突破するなど多くの再生回数を記録しました。YouTube公式チャンネルにおいても2019年9月現在、1900万回もの再生回数を記録しています。その後、2015年に40mpさん自身がイナメトオル名義でセルフカバーした動画が投稿され、アルバム『1.7m』にも収録されました。こちらは、約190万回もの再生回数を記録しています。





 さて、『からくりピエロ』のサウンドについてです。『恋愛裁判』とも少し被りますが、全体としてジャジーなアレンジになっています。初音ミクバージョンと比較してもそのように感じます。歌メロディーについてはマイナーキーによる美しいメロディーであり、寂しげな世界観です。私自身は当時、初音ミクの人気作は全体としてアップテンポで元気のいい作品、バンドサウンド、ややファンキーな作品などが多いと感じていました。初音ミクの声質など考えても、そうしたアレンジの方が合うのではないかと考えていたのです。その中で『からくりピエロの』ような歌メロ・アレンジの作品を知り、ボカロ曲の見方が変わったのを覚えています。

 歌メロディーについて特徴的な点をもう少し書きます。『からくりピエロ』はラストのサビで転調しています。ただ、注意してほしいのは、このキーは通常のサビと同じということです。1番のサビとラストのサビは同じキーです。
 
カラオケなどではあまり意識しないと思いますが、『からくりピエロ』は通常のサビでも転調しております。『からくりピエロ』はAメロBメロとラストサビの手前が同じGm(ミクバージョンはCm)、サビはAm(Dm)です。通常サビでの転調は、場面の転換を意図してるのではないかと私は考えています。また、Cメロからラストのサビにかけては、楽曲の盛り上がりを印象付ける意図があると思います。歌メロ自体は長いわけではないですが、上手く聴き手に印象付けることに成功しているのではないかと私は解釈しました。

 『からくりピエロ』の歌詞についてです。好きな相手にぞんざいな扱われ方をされながらも、相手のことを想い続けずにはいられない「ぼく」の姿が描かれています。相手に思いが届かないと知り、心の中では諦めを感じつつも、相手の好きなように操られる主人公の姿は切なさを誘います。そうした様を40mpさんは「道化」であることを比喩しています。
 私自身はサビの部分で繰り返される「回って 回って 回り疲れて」というフレーズが非常に印象に残ります。サビ等で同じフレーズを繰り返すというのは、リズム感もよく、聴き手に強い印象を与える効果があります。「回って 回って」というフレーズはリズム感の良さとともに、「君にたどり着けない」ということも暗に意味しており、リスナーに対して、主題がダイレクトに伝わるのではないかと感じました。




 さて、最後にセルフカバー版『からくりピエロ』の音域についてですが、【地声最低音】mid1F(F3) ~【地声最高音】hiA(A4) でメロディーが構成されております。一般的な男性の音域よりもやや高いです。

 まず、地声最高音はhiAになっています。サビで1回ずつ、楽曲全体では3回登場します。一般的にはhiA辺りになると地声で歌唱するのが難しくなり始めます。その点は留意しておいてください。
 さて、この『からくりピエロ』のhiA部分についてですが、場合によっては裏声でも良いのではないかと私は考えています。理由は、メロディー自体がしっとりしており、ボーカルの声の力強さがあまり求められていないと解釈しているからです。他の部分が地声であるならば、この部分のみ裏声であってもニュアンスが大きく崩れることは無いと思います。

 『からくりピエロ』の音域は、そこまで広くなく、低音域は余裕があります。hiAなどの高音域が苦手な人はキーを下げても良いと思います。また、普段歌い慣れておらず、キーをたくさん下げて練習したいという要望にも応え得る楽曲です。個人的には練習曲に向いている作品なのではないかと考えております。

 ※余談ですが、このイナメトオルさんのセルフカバーバージョンは初音ミクのバージョンと比べて音域が少しだけ広いです。私自身、音域の調査をする中で感じていることのなのですが、同じ楽曲について、女性版と男性版で音域が異なるとき、多くの場合、男性側の低音部が広がっている印象です。この『からくりピエロ』でも本来ならばイナメトオルさんの低音部はmid2Gになるところが、mid2Fになっています。
 こうした現象は、男性と女性の声質の違いに起因しているのではないかと私は考えています。例えば、「男性の方は声が低いため、低音部を強調した方が曲が活きやすい」、「女性は声がクリアであるため低音部でも声が高めに振れやすい」、逆に「男性は低音部では特に声が籠り易く、低音側に振れやすい」といった点があるのではないかと私は推測しています。