「私の最後の日」( ユアネス ) の 音域

　まず、「私の最後の日」についてです。この楽曲は、２０２１年にロックバンド・ユアネスによりリリースされたアルバム『6 case』（シックスケース）に収録されております。同アルバムはバンドとしては初のフルアルバムであり、アニメの主題歌となったシングル『籠の中に鳥』、坂本真綾さんへの提供曲のセルフカバー『躍動』、『ヘリオトロープ』といった楽曲が収録されております。

　さて、「私の最後の日」はアルバムの終盤に収められた楽曲で、タイアップなどはありません。ただ、楽曲の質やMVなども相まって、非シングル曲でありながら多くの再生回数を集めております。バンドのYouTube公式チャンネルで公開されているミュージックビデオは７３０万回を超える再生回数を記録しており、ユアネスの楽曲の中でも特に人気の高い１曲です。コメント欄などを見ると、海外からのアクセスが非常に多く、その点で非常に驚きました。


　「私の最後の日」はピアノやストリングスが主体となったスローナンバーです。歌メロはAメロBメロサビと展開され、多くの人にとって親しみやすいです。サビについては裏声が多用されております。近年のJ-POPはバンドであってもかなり器用に裏声を使うボーカルが増えておりますが、今回の楽曲についてもそうした傾向が明確に出ていると感じます。
　同曲の作詞作曲はギター担当の古閑翔平さん、編曲はバンドと釣俊輔さんによりなされました。釣さんはAimerさんやでんぱ組.incなどと縁の深い作曲家・アレンジャーです。当ブログでは、過去にゆずの『GreenGreen』（過去記事）、『日常』（過去記事）をとりあげました。

　「私の最後の日」の音域的な特徴についてです。同曲は、地声レンジについてはおおよそ男性の音域の範囲内（低音が低め）、裏声については男声域としては高いレンジで歌メロが作られております。音域がかなり広いため、キー調整には向きにくいです。
　同曲はAメロBメロは中低音中心でメロが作られており、lowF～mid1C#といった低音が多く登場します。地声の中高音についてはmid2D#-mid2F#辺りが登場し、男性としては標準的です。一方、同曲はサビを中心に裏声が非常に多く登場し、男性の裏声域としては高い方になります。この楽曲は裏声がかなり印象的であり、その成否が非常に重要になります。

　ちなみに、女性が同曲を歌唱する場合、通常はキーを上げた方が歌いやすいです。ただ、今回は音域自体がかなり広いため、キー調整は非常に難しいかもしれません。器用に歌いこなせる方であれば、ABメロ（lowF-mid2F#）を1オクターブ上のレンジ(mid1F-hiF#)で歌うというのもよいかもしれません。



　最後に「私の最後の日」の音域についてですが、【地声最低音】lowF(F2)～【地声最高音】mid2F#(F#4)、【裏声最高音】hiF(F5)で歌メロディーが構成されております。地声については一般的な男性の音域の範囲内（低音がやや低め）、裏声レンジは高いです。以下、見ていきます。

　まず、地声最低音lowFについてはAメロで登場します。このlowFについては歌い出しの瞬間的な音であるため、低音域が苦手な人は厳密な音程にこだわらなくてもよいかもしれません（歌えるに越したことはない）。今回の楽曲はlowF～mid1A#辺りの低音はいずれも歌い出しの瞬間的な音であり、低音としてはmid1C-mid1C#辺りがかなり多いです。滅茶苦茶に低いというわけではないですが、「高音域が得意な男性」だとかなり低音感があると思います（裏声が非常に得意な人はキーをあげるのもよい）。

　次に、地声最高音mid2F#はBメロやラストサビで登場します。登場回数は２回程度です。このmid2F#に次ぐ地声高音としては、mid2Fがピークとなる場面が全体で１８回登場します。こうしたことから、男性の音域としてはおおむね標準的といえます。そのため、地声高音については、標準的な男性でも歌いやすいといえます。
　今回の楽曲は、サビを中心に裏声のレンジが非常に広く、尺も長いです。一般的な男性の裏声としては高い方であるため、かなり器用な「裏声発声が不可欠」になります（裏声の練習には非常によさそう）。


　「私の最後の日」は音域がかなり広く、キー調整の余地はほとんどありません。そのため、歌い慣れた人であっても、一部歌いにくい部分が出てくるかもしれません。音域面では低音～高音までかなり広く要求される楽曲です。
　一方、同曲はメロディー自体は分かりやすく、リズムも難しい場面は少ないです。音域面でハードルのある楽曲ですが、低音～裏声高音まで広いため、音域が合うのであれば練習曲にはよいと思います。特にサビの裏声などは歌いごたえがありそうです。

　「私の最後の日」を原曲キーで歌唱する場合、地声高音についてはmid2D#～mid2F#といった中高音域をしっかり歌いこなせる力が求められます。この辺りは男性の音域の範囲内です。今回、高音については裏声が非常に高いため、この辺りが1つの大きなハードルになります。また、低音についてはlowFなどの音階が登場しますが、特にmid1C#辺りが多いです。
　こうしたことを踏まえると、「標準的～ある程度高音域が得意な男性」などが原曲キーに合いやすいと私は判断しました。「高音域が非常に得意な男性」などはキーを上げるのもよいと思います。


【まとめ】

①ABメロは中低音中心、サビは裏声高音が高い（音域がかなり広い）
②地声高音については標準的、裏声の器用な発声が重要
③原キーだと「標準的～ある程度高音域が得意な男性」に合いそう
④メロは分かりやすい。音域が合うのであれば練習曲にはよい